日本より:小さな部隊が起こした大きな出来事
校舎のあった場所が巨大な穴になってからすぐに市外への避難勧告が出され、市内の人は最寄りの避難場所に集められていた。
この現象の原因は分からなかった。だが、大きさは違えど、あのような穴が世界各地に突如出現したことが確認されている。日本も対応に迫られ、各地の穴から少し距離を置いて自衛隊基地を置き、調査を始めた。
奏太の高校の生徒と職員は自衛隊に保護されたため、今は行動を共にしており、避難場所へと向かっていた。
誰もまだ家族と会うことは叶っていない。そのため学校が消えて、穴が出来たことを直に見ている生徒と職員の集団は不安に満ちており、最悪の空気になっていた。中でも光助は親しくしていた友人たちの生存も確認できていないまま移動されられるのが悔しくてたまらなった。
あの現象が起きてから二週間が経った。しかし、一向に調査が進まなく、国は困っていた。見つかったものといえば、地下へと繋がる階段がどの穴にもあったことぐらいだった。そして分かったことは、穴が出現した場所のほとんどが現在発見されている遺跡の一つだということだ。三内丸山遺跡だとか場所も穴に変わっていたことがニュースで報道されていた。
自衛隊は、装備は万全だが情報が乏しく突入は危険と国に判断されており、情報が整い次第作戦を立てるらしい。その間、自衛隊は周囲の捜索を命じられていた。そして、ある部隊が奏太たちの高校がある市の市役所の調査へと赴いた。
*
「隊長、特に変わったものはありませんね」
「気を抜くなよ。またどこに穴が開くか分からない状況なんだからな。とは言っても隊を分けて捜索にあたっているがこれと言って新たな収穫はなしか。一度エントランスに集合をかけるか」
部隊長がトランシーバーを構えて隊員に連絡を送る。
「調査の切りが着き次第、エントランスに集合しろ」
しばらくして、隊員が全員戻り、成果はあったか確認を始める。しかし、どこも異常は無かったらしい。
「やはり成果はなしか・・・ あとはここだけだな」
見つめる先は受付。するとある隊員が
「どうせ何も無いと思いますよ」
しかし隊長は気がかっているようだった。
「いや、念入りに調べるべきだ。もしかしたら、があるかもしれない。その確認を怠ったせいで国民に被害を出したくはない」
「なら早く調べてしまいましょう。そのもしかしたら、が一秒一分を争うものかもしれませんから」
そういうと、その隊員は一足早く受付に向かった。
「ん?なんだこれ?」
その声を聞き、他の隊員も集まる。そこにあったのは見たことのない端末だった。誰であるのか分からないが隊員の誰かが興味本位で端末に触ったのだろう。その端末が起動してしまった。
「総員、警戒しろ!何が起こるか分からないぞ!」
『起動を確認。これより同端末が設置されている全ての場所でシステム“ギルド”のアップデート、及び設立を開始します』
そんな機械音が聞こえてくるのとと同時に、壁をスクリーンにして様々な映像が映された。慌てる隊のなかの一人が一言放った。
「ゲームみたいだ」
その発言を聞き他の隊員もよく確認すると、そのまま同じというわけでわないが、その映像にはゲームに出てきたものに酷似した内容が書かれている。
隊員が目を輝かせている中、隊長は焦っていた。起動してはならないものを起動してしまったのではないかと。
「これより直ちに帰還する。名倉、お前はここに残れ。何かあったら連絡しろ。自分の身に危険が及ぶことがない限り、市役所から離れずにここの情報を記録しろ」
「了解しました!」
嬉しそうに名倉は答えた。緊張感のない奴め、と隊長からの好感度は若干下がったが。
急いで車を走らせる。本部に連絡を入れるために。
そして、このシステムを起動したことにより、世界の在り方が変わろうとしていた。