再会
「お、お前、奏太か・・・?」
「え?」
パーティーのピンチに割って入りオークナイトと対面している最中、まさか名前を呼ばれるなんて思ってなかったので力が抜けてしまった。何で僕のこと知ってるの?山から下りて来て早々に名前を広めた覚えはない。
「俺だよ、アル!」
アルさん?ああ、セントルに行くときに護衛してくれた人だ!アルさんの後ろにはテリーさん、セリナさんエディアさんがいた。パーティーは変わりないみたいだが装備は素人目に見ても一年前より良い物になっている。
「こんなところで偶然・・・ってそんな場合じゃなかった!動けますか?」
「ああ、まだやれる」
「私たちも」
セリナさんたちも大丈夫なようだ。なら、一緒にあいつを倒そう。
「テリー、もう一度あいつの気を引いてくれ。エディアとセレナはいつも通り後方支援を。奏太には一緒に来てほしい。あいつの脚を狙う」
アルさんの指示で分担がしっかり別れる。全員すぐに体勢を整えて攻めの一瞬を見極める。そして盾でファイアボールを警戒していたオークナイトが攻めに転じようとした瞬間にアルさんが走り出した。
「バリアー!」
セリナさんが魔法を使うと、五人の体を薄い光の壁のようなものが覆う。プロテクトに似た魔法で受ける物理攻撃を軽減してくれる魔法だ。
テリーさんが僕たちの前に出るとオークナイトは剣を構え直して面する。
僕たちはテリーさんの後に続く。しかしオークナイトはテリーさんよりも僕たちに注意を向けていた。
「アトラクト!」
テリーさんが叫ぶと、さっきまで僕たちに向いていた視線が急にテリーさんに向いた。そして、オークナイトはテリーさんに仕掛けた。その剣撃をテリーさんは真向から受け止める。その隙に僕たちはテリーさんの横を縫って今度は僕たちが仕掛ける。それぞれの脚に分かれる。
僕はギフトに魔力を込め、その足を鎧ごと斬り抜いた。アルさんの方を見てみると攻撃には成功したようだが、脚を完全に無力化出来てはいないみたいだ。だが片足をなくしたことでオークナイトは体勢を崩し大きなチャンスがあるように見えた。
アルさんはすぐに身を返して次の攻撃に移ろうとする。しかし、オークナイトの手がすぐそこまで来ていた。
僕が動こうとしたその時、シュッ、という音が聞こえた。きっとエディアさんの弓の音だろう。でも、矢一本じゃこの状況は・・・
しかし、僕の予想に反することになった。
放たれた矢は光となり、そして、一本の光から分散して多数の光の矢となった。
光はオークナイトのいたるところに当たった。なかでも目に当たって怯んだのが良く、オークナイトはアルさんに手を届けることはできなかった。そのうちに、アルさんはオークナイトのもう片足の無力化に成功した。エディアさんってあんな芸当もできるのか。すごい。
そしてオークナイトはなす術をなくした。
「今だ!畳みかけるぞ!!」
その後の一斉攻撃によって、オークナイトは倒された。
パーティーの強みを全面に感じる戦いだった。一人ひとりが支え合って戦うパーティー戦は僕のスタイルとは別物だ。
今回はすぐにかたがついたおかげで僕もついていけたけど、それでもみんなの動きに合わせることで精一杯だった。まだまだ足りない部分が多いな僕は。
アルさんは武器を納め、モンスターの死骸に向かっていき剥ぎ取りを始めた。僕は剥ぎ取りのレクチャーを受けながら、腰のポーチに素材を詰めていく。もう満帆だな。
アルさんたちの方を見るとまだ剥ぎ取りを続けていた。僕と同じくらいのサイズのポーチに入れてるのにまだ詰めれるんだ。スーパーで買い物をしている歴戦のお母様方のような詰め方でもあるのかな。
「奏太、もう終わったのか。まだ獲れる場所が残ってる気がするが」
アルさんは不思議そうに尋ねてきた。そんなに剥ぎ取り終わるのが早かっただろうか。
「もうポーチが満帆なんですよ。それよりどうしてそのポーチにそんなにものが入るんですか」
「そりゃこれがマジックポーチだからだが・・・お前これを知らないのか?」
「は、はい」
アルさんはマジックポーチの口を見せながら言う。覗くとそこは真っ暗で底が見えない。セントラルで僕たちが住んでいた結界の入り口に似たような感覚がした。
「これはな、中が異空間になっていてそこにものを詰め込めれるんだ。たぶん無限に詰め込めるんじゃないか。けど欠点があってな、取り出すときはランダムに出てくるから武器とかの収納には向いてないな。ハンター協会の窓口でこれを渡せば、中のもの全部査定してくれるから結局これは採集に向いてるってことだ」
「新人の時は自分の一張羅も一緒に査定されちゃってたわね」
セリナさんが笑いながらアルさんの話をする。
「言うなって!っと、そういう事だから使うときには注意しろよ」
「分かりました。セントルに帰ったら探してみます」
そんなこんなでいろいろなやり取りをしているうちに採集を終えて、帰路につこうという話になった。ダンジョンから出るときには転移陣というものを使うらしい。それを使うと、ダンジョンからも出られるし次に来たときはここから進むことができるというので相当便利だ。この魔法陣もダンジョン由来のもので原理は不明らしい。
ボス部屋を後にしてからセリナさんがその魔法陣に魔力を込めると僕たちは一瞬でダンジョンの入り口まで戻って来ていた。
地球にいた頃には瞬間移動というものを使ってみたいって思ったことあるけど、実際に体験してみると頭が状況を整理しきれずに少し混乱する。でもこれにも慣れないとな。異世界はいろいろ新しすぎるよ。
外はすっかり夕陽のオレンジ色に染まっており涼しい風が吹いていた。アルさんたちもセントルから来ていたみたいで帰路は同じだった。
「おいおい奏太。ダンジョン内で触れてなかったが可愛い彼女ができてるじゃねえか。羨ましいぜ」
アルマタリスにも聞こえるように言うので少々気まずい思いになる。ここはきちんと否定しなくちゃ。
「違いますよ。ただの仲間です」
またまたと、ちょっかいを出してくるアルさん。そんなアルさんの耳を引っ張り僕から引き剥がすエディアさん。
「ごめんね。こいつデリカシーなくてさ。気にしないで」
それを見てわははと笑っているセリナさんとテリーさん。
ただ見ているだけの僕でも胸が暖かくなるような感覚が伝う。これもパーティーでいることの醍醐味なのだろう。とても羨ましく思える。
ところでさ、とアルさんが急に真剣な顔をして僕に話しかけてきた。
「奏太、俺たちのパーティー“ルミーユ”に加わらないか?」
最初こそ驚いてはいたが同時に嬉しい申し出だった。実際今日は一戦しか一緒に戦ってないけど一人の時よりも多くを学べた。それに今過ごしているこの時間は悪いものじゃない。
「嬉しいですが、僕たちはこのダンジョンを攻略した後にはこの世界を回って旅をするので一緒には行けなくなっちゃうんですよね」
「そりゃもちろん、奏太の好きな時に抜けてもらって構わない。それでどうだ?」
つまり臨時パーティーのお誘いだ。それならば快く受けることができる。アルマタリスにも確認を取ると問題ないようでこの話しを受けることにする。
「それでもいいんですか。ならミロウのダンジョンを攻略するまでお願いします!」
少し驚いた顔をするアルさんたち。そして笑顔で僕の提案を受け入れてくれた。
「俺たちもミロウのダンジョンを攻略する気満々だぜ。だがよ、まだ攻略されたダンジョンは少ないし難易度も高い。このパーティーは長くなるかもしれねえぞ」
みんな本当に暖かい人たちなのだなと心から思う。しかし僕は地球に帰るのだ。こんなところで立ち止まっているわけにはいかない。
「アルさんたちとはもっと同じ時間を共有したい気持ちでいっぱいです。けれどこのダンジョンに長居するつもりはありません。アルさんこそ覚悟しておいてください」
ニヤリとした顔をしていたのかもしれない。こんなやりとりが楽しいのだ。友のような人と話したのはいつぶりだろうか。
こうして僕たちのダンジョン攻略が始まった。




