表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/31

作戦会議

地球へ帰還するための魔法陣が何者かによって閉ざされていたため、とりあえず結界の中に戻った僕たちは家の中でテーブルを囲んで座っていた。そしてこれからについて話し合い始めるところである。


焔は後悔や苦悶の表情を変えることはなかった。


守護の力に侵されたその体は老衰することなく幾百年という年月の間世界を見ていくことができた。その旅の最中にもアルマタリスや管理しているダンジョンに何か異常は無いか常に意識していた。


異常があれば焔の体に刻まれた守護の力にも異常を感じることができすぐに気づくことができる。異常を検知したら、その身に刻んでいるセントラルへと転移できる魔法陣を発動させすぐに駆け付けようという算段だったらしい。


しかしこの有様だ。しかも僕が転移してきたタイミングであり焔はセントラルに在住していた。


焔のミスとはいえ様々なイベントが重なったタイミングだ。偶然起きたことではなく計画されていたことなのかもしれない。


今唯一の希望は焔の話しからしてどうやら地球へ戻る手段が完全になくなったわけではないらしいことだ。他にも魔法陣がある可能性があるのだという。しかし、焔でさえもその場所の検討すらもつかないとなりどうしたものかと困り耽っていた。


「守り人として任されていた俺がみすみす何者かに魔法陣を使わせてしまった。これは俺の責任だ。魔法陣の捜索は俺がやる。奏太、お前は絶対に帰してやるからな」


焔は相当な責任を感じているらしい。そこまで気負われると逆に申し訳なくなってしまうが僕だって地球に帰りたいのでその調子で頑張ってもらうとしよう。


さて捜索は焔がしてくれるというが僕たちはその間どうしたら良いものか。この空間と結界はもう一週間と持たない。


「私たちはどうしたらいいの」


同じことを思ったのかちょうどアルマタリスが焔に聞いていた。


「お前たちはこの世界に触れていないだろう。世界を見て回ったらどうだ。アルマは前大戦のこともあるし、奏太に関しては今回よく頑張ってくれた。その休暇だと思ってどんなふうに過ごしてもらっても構わない」


そう焔が言うとアルマタリスは椅子から立って焔の方へ体を前に出して「私も一緒に行く」と言い出した。


それを聞いて焔はアルマタリスを静止する。


「捜索は俺に任せてくれ。今回の責任を取らせて欲しい」


焔は意地でも1人でやるつもりなのか。ならば僕が出る幕ではないのかもしれない。しかしアルマタリスが探すと言っていて僕だけ探さないのは格好がつかない。それに僕だっていち早く帰りたいんだ。みんなで探して捜索範囲を広げるに越したことはない。


「僕も探すよ」


焔はどこか飲み込めない表情をしていたが少しして柔らかい表情になっていった。


「そうか分かった。それじゃあ申し訳ないが2人にも頼む。けれど俺は1人で捜索する。そのほうが動きやすいしな。それに2人には休暇が必要だ。旅行気分で世界を転々としながらでいいから捜索を頼む」


その言葉に僕はやれやれとした態度でいたがアルマタリスは仕方ないといった諦めにも似た表情をしていた。


「それじゃ、これから俺たちは別行動となるわけだが2人でまずセントルのダンジョンで路銀を稼いでもらおう」


ん?今2人でって焔は言ったのか?


内心やった!という感情が込み上げる。こんな美人と一緒に旅ができるというのに心踊らない男子がいるだろうか。いやいない。しかしながらそれを知った彼女の反応は芳しくなかった。


焔の発言を耳にしたアルマタリスはこちらを一瞬見やったがすぐに焔の方に向き直り少し不機嫌そうな顔をしている。


どうやらみんなで料理をした時に少しは仲良くなれたと思っていたがまだまだだったらしい。どう見ても悪印象である。


嫌われているのかな。もしそうだったら結構ショックだなぁ。


一目惚れした相手からの好感度がないと実感するのは何回経験してもこう心に堪えるものがある。そういえば中学の時にも同じようなことがあったな。あの時はお互いの関係値が無さすぎるまま僕がグイグイ行きすぎたのが問題ではあったけど。


そうして今までの一目惚れ事情を1人で耽っていたところ焔の声によって現実に意識を戻される。


「奏太、アルマは現世に戻って間もない。すまないが慣れるまでお前が面倒を見てやってくれ」


これからはアルマタリスと一緒に行動することになるのか。でも当のアルマタリスさんは僕のことは少なくとも好印象としては受け取ってくれていないのは僕だって気づいているのに果たしてその役割が僕に収まるのだろうか。


僕はチラッとアルマタリスの方を見てみる。


ほら見たことか。アルマタリスは目を細めており口角は全く上がっていない。とても不機嫌だ。先が思いやられる。


それでもアルマタリスはなんとか納得してくれたようだ。


焔は今よりもずっと前から世界各所を旅していた。僕たちはこの世界情勢に疎いのでこの分け方は効率を重視するのであれば理にかなっている。ならば僕たちも捜索に協力しつつ、焔の言っていたように異世界旅行と行こう。


そうして話しは纏まり、これからは二手に分かれて行動することになる。


しかし、僕はセントルで路銀を稼いでからの方針が見えなかった。僕たちには世界を旅するとしてどこに行くのか判断材料が圧倒的に不足している。それを見越してか焔はテーブルに地図を広げて色々と解説してくれた。


「まずはこの大陸の中央に位置しているのがここ、セントラルだな。そのすぐそばにオルモンド中立国の都市の一つであるセントルがある。セントルは大陸中央ということもあり特に流通の中心地となっている。情報も多く流れ込むからな。最初は俺もセントルで情報収集をしてから行くことにする」


ということはすぐにお別れということじゃないのか。まだまだこの世界は分からないことだらけで不安なことは多いから焔の存在というのはとても大きく少し安心だ。


少し焔は考えてからよしと言って続ける。


「俺は情報を集めたらセントルを発つがお前たちには俺が目指す逆の方向に進んでもらいたい。出発後にしばらくして目的地が被ってしまえば二手に分けれる意味がないからな」


これで僕たちのセントルの後の進路が決まる。焔と別れることに今は不安を感じるが徐々にこの世界にも慣れていかないとな。


それから焔は各国の説明を続ける。


セントラルを中心にして東にある天照王国、北東にはディーチ帝国がある。西の方にはルーフル聖国、ナギル王国がある。この2つの国はかつてゼノさんやアルマタリスの国があった場所に建国されている。もしかしたら重要な手がかりを持っているかもしれないと焔は目星を立てていた。


ついでに焔の故郷についても聞いてみたけれど、どうやらもう滅んでしまっているらしい。焔の国があったとされる最北端のから少し西に進んだ地域には地図上から見て何も描かれていなかった。


一通りの説明を終えて僕たちは休憩と出発の準備に入る。この大陸にはどうやら9ヶ国あるらしい。しかし大陸全てがどこかの領地というわけではないみたいだ。代表的な例で言えば、僕たちが今いるセントラルが当てはまる。他には焔の故郷があった北西の地や南にある大森林などがあり他にもいくつかある。これらのどれもが禁忌の地と呼ばれるいわく付きの地域らしい。


僕は少しの食料をバッグに詰め込み、家の外に出て散歩しながらみんなの準備が終わるのを待っていた。その間に焔と定期的に連絡を取り合うために使う“メッセージ”という魔法を覚えておく。どんな場所にいても連絡を取りたい相手をイメージすることができれば相手に何か伝言を伝えることができる便利な魔法だ。


桜の大樹の下に座りメッセージを使ってみる。試しに焔に使ってみるか。


『準備終わったよ』


適当に思念を送ってみる。僕の中から魔力が出ていき、その一部が戻ってくるような感覚がする。すると直ぐに返答が返ってきた。


『分かった。こっちももうすぐ終わるから少し待っていてくれ』


どうやらちゃんとメッセージを使えたみたいだ。相手からメッセージを受けると直接脳に話しかけられているみたいで少しゾワゾワするけど言葉はわかる。


ふと、僕は思いつきメッセージを飛ばしてみる。しかしそれに返答は返って来なかった。僕が出した魔力の一部が帰ってくる感覚もない。届かなかったってことか。


弟の楽に対して送ってみたが結果は振るわなかった。いくら万能な魔力でもリーのような最初から魔力で追跡しているような仲介者がいない限り星間ではやり取りできないようだ。


微かな風に吹かれて黄昏ていると2人の準備が終わったようで声を掛けられる。それからこの空間を出ることになると焔は振り返り家や大樹を一瞥しそれから直ぐに向き直り結界を抜ける。


焔は少し満足気な表情をしていたような気がする。


僕も振り返り最後の挨拶をする。今度こそ本当のお別れだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ