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日本より:世界の変化

後々異世界が多く出てくると思うので、ジャンルをローファンタジーからハイファンタジーに変えさせていただきました。勝手ながらすみません。

side: 沼津光助


俺たちが、ギルドのことをネットに流してからすぐに行動を起こす人がこれでもかと現れた。それから何週間かしてダンジョンについても情報がネットに流れ、ダンジョンに挑む者、冒険者が現れた。


それに色々他の情報も出回った。俺たちの学校があったところもダンジョンになっていること、ダンジョンにはモンスターがいること、冒険者が実際にダンジョンの中のモンスターを倒したこと、ジョブに合っていないことをしようとすると極端に下手になること、ダンジョンのモンスターには銃は効かなかったのに、ジョブに合った道具を使うと攻撃が効いたこと。


これに関してギルドに聞いた者がいるらしく、どうやら今の俺たちや魔物の体は魔力の層で覆われていて魔力の籠っていない攻撃が通用しないらしい。


生産系のジョブも確認されていた。生産職の人が作るものはすぐに世の中にその有能性を示した。そして、冒険者の一人がダンジョンで狩ったモンスターの素材を知り合いの生産職の人に持っていき、何か作れないかと頼んだところ今までよりも実用性のある家具、防具、武器が出来たそうだ。


こんなことが世間に知れ渡れば、当然一大ブームになる。これからの世界の動向について真剣に取り掛からなければいけないと、国は今更判断した。


しかし、これもジョブのおかげだろか。政治家たちが立てた政策は驚くほど正確に、しかも簡潔にジョブの枠組みを決めた。誰にとっても不利益がないものでもあった。


冒険者は素材を生産職に持っていく。生産職は冒険者から受け取った素材で道具を作り、売る。この関係が出来上がり、大きくまとめて冒険者というものも世間一般的な職業になっていった。


そして俺は今、ダンジョンの前に立っている。学校は転校の案も出され何人かは普通に転校したのだが俺は、俺たちはその道を断り冒険者として活動することに決めた。


モンスターの取り合いがないように時間制で、一グループずつ入るように決められている。あとは、ダンジョンで死ぬことが無いように三人以上で入ることも決められていた。それでも帰ってこなかった人もいるらしいから要注意だ。クラスメイトとはグループで別れて、ダンジョンに入ったりしている。幸い、まだ誰一人として欠けてはいない。俺は今、彩と堀内(ほりうち) (けん)とグループを組んでいる。健のジョブは盾師だった。このパーティの中枢とも言える。


「光助くん、早く奏太君と累君が見つかるといいね」


「ああ、でもまだ遠くなりそうだが・・・」


悔しいという気持ちが顔に出ていた。今、俺たちがいるダンジョンは学校のところではない。なぜなら、学校であったところのダンジョンは赤ピンで示されていたからだ。たとえ赤ピンでそこが示されていても俺はなりふり構わずに突っ込んだだろう。二人のために。そんな俺をクラスメイトが抑えている間に、赤ピンのダンジョンに挑む者が現れた。調子に乗った者、自惚れた者、国が派遣した者。だが、そのうちの誰一人として帰っては来なかったらしい。そのことを聞き、ようやく俺は収まった。そして、最優先目標を強くなることに決めた。


生産職の下田(しもだ) (まる)がクラスにいたことで道具や装備は整っていき、しばらくして政府によって冒険者がジョブにされてからは条件付きでダンジョンに誰でも入れるようになった。そのことを聞き、我先にと俺たちはグループを作り、ダンジョンへと挑んだ。最初の結果は一匹のゴブリンを狩ることができただけだった。けど、俺たちにとっては大きな進展だった。自分たちでも戦える、と嬉しさで胸を躍らせた。だが、パーティの人数が多すぎて戦いがしにくく、実際に戦ったのは数人だけだったので、これからは少人数で動こうということになった。


そして今に至る。まだ一階層を完全に制覇した者はいないらしく、完璧なマップもない。今回俺たちが行くところは、マッピングされている部分であり、奥にはいかない。奥で何が待ち構えているのかも分からない状態で少人数で行くのは危険過ぎると考えたからだ。

だけど俺はこのダンジョンをいち早く制覇してもっと上のダンジョンに挑みたい。そんな俺の焦りからかダンジョンに挑む連日を重ねるごとにクラスのみんなは疲弊し士気も下がってきているのを身に感じていた。

それでもみんながついて来てくれるのは、今までとは違う世界に変わってしまって俺について来ざるを得ない状況になってしまっているからだろう。こんな状況にいつまでもみんなが耐えれるわけがない。そんなことはわかってはいるのだが俺はこの方法しか知らずほかの道に歩を進めることができないでいた。


「次に入る方は貴方方ですね。それでは条件に反していないかチェックさせてもらいます」


そう言って、俺たちをチェックしているのはギルド職員だ。国の政策でギルドにダンジョンの管理を任せるとしたことと、ダンジョンに詳しいことが背景にある。


「はい、問題ありませんでした。ダンジョンは非常に危険な場所です。判断を誤らないように。それではご武運を」


俺たちはダンジョンへと入っていった。


光る謎の鉱石によってダンジョン内は照らされているが、薄暗くどこか不気味だ。実際、どこから敵が現れるかもわからない。しかし、そんなダンジョン内の雰囲気とは正反対の明るい声が木霊する。


「健君を含めたパーティーは初めてだよね。いままでより簡単にゴブリンを倒せるのかな?」


「そりゃそうだろ。攻撃を引き受けてくれるんだ。それに丸が作ってくれた武器があるんだ。そう簡単に死にはしないさ」


そんなやりとりをしている内に早速ゴブリンが現れた。


「健、注意を集めてくれ!その内に左右に俺らは展開するぞ!攻撃は俺が先、彩が後だ!」


俺の指示を聞き、すぐに二人は頷き行動した。ゴブリンは盾職のスキルの“アトラクト”で惹かれていた。ゴブリンが健に攻撃した瞬間に俺たちは動いた。健はゴブリンの攻撃を盾で受け止め、盾を押し出し、ゴブリンを仰け反らせる。その隙に俺がゴブリンを殴り飛ばして、彩がトドメを刺した。


「いつやっても、トドメを刺すのは流石に心に来るよ」


もう勘弁みたいな声で彩が言った。


「そんなこと言ってられない。もっと強くならなくちゃ」


「だったら、光助君がトドメを刺すことになったときは、その行為に何も感じないってこと?」


「当たり前だ」


「なら私はちょっとまだキツイから次出てきたら、私が先、光助君が後ね」


「・・・やってやるさ」


会話をしながら抵抗はあるがゴブリンを解体して丸が欲しがっていた部位と魔石をリュックに入れる。それから携帯に保存して置いたこのダンジョンのマップを見て進んでいく。途中でそこら中にある光る鉱石とは明らかに違う岩石もあったからついでに採取しておいた。ダンジョン内の物は様々な用途に使えるし、金にもなる。適当に採取していてもその日のご飯が賄えるくらいにだ。まだ市場価格が安定していないせいだろう。


今日は珍しくゴブリンに遭うことがなくここまでと決めていたところまで来たから引き返していくと、途中でまたゴブリンと遭遇した。これまた一匹のみで先ほどの戦術通りに戦えば簡単に倒すことが出来そうだ。そして彩が一歩踏み出す。


「さっき決めた通りでいこう」


彩がそう言ってから戦闘が開始された。さっきと同じで、健がゴブリンの体勢を崩して、彩が腹を刺した。そしてトドメに俺が殴ろうとした。・・・が、俺の拳は腰を入れる体勢で止まっていた。


「どうした?早くやらないとこっちがやられるぞ!」


健の呼びかけは聞こえたが、応えられなかった。そうしている内に、ゴブリンは死んだ。腹部からの出血量が思ったより多かったのだろう。丸が作った剣が強いことに彩は関心していたが、俺はその場に膝をついた。その様子を見て、慌てて彩と健が駆け寄る。


「おい!どうした?どこかやられたのか?」


「俺は・・・やれなかった。強くならなくちゃいけないのに、俺は・・・」


沈んだ声で言った。健はなんと言葉をかければ良いのか分からず黙っていると、彩が俺の肩に手を置いて言葉をかけた。


「光助君。何かの命を奪う時に気持ちを割り切るのは難しいことだよ。そんなのすぐに平気でやれちゃったら、たぶん人間じゃなくなってると思うんだ。それは、これから徐々にやっていくものだと思う。私だって最初は怖くて怖くて震えてたんだから。光助君はまともな人間って分かって私、安心したよ」


そうして、優しく宥める。


「俺は何にも知らなかったんだな。自分のことばっかり考えて。自分では周りはちゃんと見えてると思ってたんだがな。俺もまだまだか・・・彩、俺は仕切るのを止める。お前のやり方を見せてくれ。このまま俺が引っ張っていったら、どこかで壊れる。だから、しばらく彩に任せる」


「分かったよ。でもその言い方だと、将来またリーダーを張るようね」


「悪いが今でも俺のいるべき場所はそこだって思っているんだ」


「分かってんじゃん」


彩は笑顔で言うと、俺の手を掴み立ち上がらせる。そして、楽しげに、


「ほら、こんな所で立ち止まってると死んじゃうかもしれないでしょ。早く帰るわよ、元リーダーさん」


「ふっ、ありがとう」


健はというと二人の空気の中に入れず、只々気まずく壁のように過ごしていた。


俺たちはダンジョンから帰り、ついでにギルドに寄っていった。ダンジョンの途中で見つけた岩石について聞くためだ。受付に並び、自分たちの番を待つ。ギルドは各市役所にあるというのに、結構人で賑わっていた。ギルドの掲示を見ている間に番が来る。


「こんにちは。今日はどのようなご用件でしょうか?」


代表して彩がギルド職員の女の人に言う。


「ええっと、これなんですが、これって何か分かりますか?」


「少しお預かりいたしますね」


そう言って、鉱石を見渡して、書物とも合わせて見ている。そして結果が出たようだ。


「お預かりしたものなのですが、なんとこれは高濃度の魔石です!これほどの物は世界初ですよ!おめでとうございます!」


興奮気味に話してくるギルド職員に彩たちが困惑している時に後ろからなんだなんだという声が聞こえてきた。どうやらギルド職員の声は思ったよりもデカかったらしい。


「そういえば魔石って結局何なんですか?」


彩は疑問に思い聞いてみた。


「魔石というのは、簡単にいうと魔力を含んだ石です。魔力は魔法使いさんが魔法を使うときに必要な力です。なので、この石を使って家具や武器、防具を作れば、誰でも魔法が使えるというわけです。要はとっても便利なものです。高濃度の魔石はそれぞれに特有の力を持っています。ちなみに、この石からは防御系の魔力を感じます。そして、そんな貴重な物を盗まれてしまってはいけないと思い、ギルドでは特殊な魔石の保有者を決めることができます。もちろん、本人の同意があれば譲渡は可能です。もし、登録してある魔石を奪った人はギルドに通報され、すぐに国に情報が行きますのでくれぐれも強奪しようなんて思わないでくださいね。それで、お三方の内の誰か、登録されますか?」


「健君。登録して」


「えっ?いいの?」


困惑している健に彩は当たり前でしょというような声で言った。


「だって、この魔石には防御系の魔力があるんでしょ?健君にピッタリじゃない」


それにと続けて


「気まずくしちゃったお詫びって思っておいてよ」


健は俺の方も見たが、こちらに優しい顔を向けていた。


「なら、ありがたく受け取るよ」


そう言って、健は手続きを進めていった。その際、譲渡出来る人を決めれたので丸の名前を書いておいた。


国でダンジョンの件について話がまとまった頃、避難場所からダンジョンに家が飲み込まれていない人は、普通に家に帰ってもいいこととなった。そこで、クラスメイトと落ち合う場所を俺の家と決めた。俺の親は外国で働いているから家には俺しかいなく、しかも結構広かったし集会所としては良い場所だった。そして、彩が進行役となって今日の魔石について話し合う。


「最初に報告するけれど、光助君はリーダーを降りたわ。理由は自分を見つめ直すみたい。でも、いずれまたリーダーに立つと光助君は宣言したわ。みんなそれでもいい?」


彩が聞くと、クラスメイトからは「それも光助の考えの内なんだろ?だったら全然問題なさそうだ」などの俺を信用している声が飛び交った。そんな声を聞いて、光助は嬉しく、同時に申し訳なくもなった。

そして、みんな賛成と確認して次に移る。


「それで、ここからが本題。今日私たちはダンジョンの中でこれを見つけたわ」


健が魔石を取り出すと、「なにこれ?」という声が飛び交う。


「これは高濃度の魔石で、これを使えば武器や装備をもっと強化できるみたいなの。だからこの石はこれから相当重要な物になってきそうなの。明日もダンジョンに潜る人は見つけ次第、取っておいてね。あと魔石を回収できたら、帰りにはギルドによって行ってほしい。そこで所有者を登録しないと盗まれた時にどうしようもなくなるからお願いね。丸君、この魔石を使って健君の盾を作れるかしら?」


「もちろん!作ってみせるよ!」


自分の知らない素材に胸が踊っているのか、ものすごい勢いで応答した。彩たちには、そんな丸があのギルド職員と重なって仕方なかった。


そして会議も終わり、今日ダンジョンに潜ったメンバーだけが残った。そして、彩が気になっていることを確認する。そして予想は的中した。


「やっぱり、この魔石のことを書いた人がいる。それ自体はいいけれど問題は・・・明日からこれの争奪戦が始まりそうね」


はぁ・・・と、ここにいる全員が一斉にため息をこぼした。


毎日この場所を通る。以前学校があった場所だ。もう今はダンジョンになってしまったからダンジョンを囲む神殿しか見れないが。もしかして、奏太がここにいるんじゃないかと、そう思って通っている。


「やっぱり、居るわけないよな。奏太と累がいなくなってから二週間は経ったか?こんな希望に甘えるのは止めに・・・あれは・・・?」


神殿の前に人が立っていた。その人はなんと俺たちの学校の制服を着ていた。信じられなかったけど必死にその場へ駆け寄った。


「お、お前・・・累、か?」


累らしき人はこちらに振り向く。その顔にかかった眼鏡には罅が入ってしまっているが確かに累の掛けていた眼鏡を着けている。


「光助か。久しぶりだな」


返事はなんともドライに返してきた。


「なんだよ、そんなにあっさりとして・・・」


こっちはあんなに心配してたのに・・・


「いや、すまんな。色々見てきたから気が滅入ってるんだ。光助、俺もお前にまた会うことができて嬉しいよ」


そうだよな。たぶん、奏太や累はダンジョンに飛ばされたんだろう。そこから帰って来てるんならそんな気持ちになってても当然じゃないか。


「俺こそごめんな。疲れただろ?帰ろうぜ」


俺は累を手で誘って、一緒に帰路へ着いた。

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