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???ダンジョン:第五階層

五階層に降りて、僕はウルとの戦闘の息を合わせていた。今はゴブリンと対峙している。ウルだけに任せても全然問題ないくらいに余裕で対処してくれるけど、強い相手との戦闘になるとやっぱり息を合わせることが重要だと思ったから、まずはゴブリンで試してみている。


「背後を取って、僕の方に注意が向いたら突撃して!」


そう指示すると、ウルは素早くゴブリンの後ろに回り込んだ。ゴブリンがウルに気を取られていたから、そこら辺に落ちてる小石をぶつけて僕に注意を向けさせた。ゴブリンが僕に注意を向けた瞬間にウルは切り返して、ゴブリンを襲った。ゴブリンはウルの爪で引っ掻かれ倒れる。


ゴブリンが持っていたポーチの中身を回収してマッピングをしようとすると後ろでグチャグチャという音がした。振り返って見ると、ウルがゴブリンを食べていた。敵じゃなかったことに安堵したけれど、死角でお食事するのは控えてほしいな。びっくりする。血でウルの口が汚れていたから、倒したゴブリンから取った包帯で拭いておく。包帯はまだ余裕があるくらいに余ってる。まだ心配いらないな。


途中でホブゴブリンメイジとの戦闘があって相手がファイアボールを撃ってきたけど、ウルは三階層のボスの狼みたいに怖がったりはしなかった。魔物化してる所為なのかな?でもそのおかげで連携を取って攻撃できるから安全に倒せるようになった。

連携を高めつつ探索していると、ウルが咆哮した。すると、周りからのゴブリンの気配というか威圧的なものが無くなった。そんなウルの新しい特技を見た後、例のごとく壁に違和感を感じセーフルームに入っていった。

休憩をとった後、机の上の本を見た。今回のボスは召喚魔法を使うらしい。それに、ホブゴブリンよりも強大だという。僕も今ならホブゴブリンとなら少し余裕を持って戦えるけど、それより強大って、また死ぬ気を味わうことになりそうだ。


「はぁ・・・」


そんな僕のため息を聞いて、ウルが僕を想ってくれたのか顔をすりすりしてくる。僕も撫で返して応える。ウルのおかげで気持ちが入れ替わった。


「行こう」


ボス部屋に着き、しばらくして魔法陣が浮かび上がり、光から魔物の形が作られていく。そして、そこに現れたのは、身長はホブゴブリンと一緒だが、顔や体格、服などの全てがホブゴブリンとは一線を画した威圧感や凛々しさがあった。


「ゴブリンの王・・・ゴブリンキング」


そんな印象を受けた。威圧に怯えているとゴブリンキングは一気に距離を詰めてきた。僕とウルは二手に分かれて避けたが、ゴブリンキングは持っていた杖を振り回して、それが僕に当たった。僕はそのまま吹き飛び、壁に当たるまで転がった。痛みに必死に耐えながら、ゴブリンキングを見るとその周りに魔方陣が浮かび上がっていた。そして、そこからゴブリンが三体召喚されてきた。


「きつすぎるでしょ・・・こんなの」


嫌味の言葉を吐き捨て、立ち上がる。ゴブリンキングはゆっくり僕に向かってくる。その時、黒い稲妻が奴の背後に走る。奴の首に目掛けて放たれたそれはその首を貫くかに思われた。だが、奴はそれに反応し杖で受け止める。

僕はその反応速度に驚いたけど、ウルはもう次の行動に移っていた。奴のゴブリンの召喚が終わった直後にウルは咆哮を放った。咆哮によって、そこに現れたばかりのゴブリンは動くことが出来ずに一匹一匹ウルに殺されていく。


「本当にいい相棒を持てて嬉しいよ!」


ウルが無事なのを確認して、息を整える。距離があるうちに一応ファイアボールを放ってみたが、ゴブリンキングの皮膚は少し黒くなった程度でビクともせずに歩いて向かってくる。僕は短刀を構えて突撃した。奴は杖を振ってきたが、ギリギリで躱し、なるべく距離を詰める。


「そんなリーチの長い武器じゃ、近距離には対応できないだろ!」


短刀の届く距離まで詰め、斬りかかる。斬りかかった所からは血が出てきている。着実にダメージが稼げていることを知り、はやる気持ちを押さえれず僕の攻撃が速くなっていく。そのとき、不意に僕の体が浮き上がった。


「えっ?」


奴は僕を蹴りで浮き上げていた。そして、僕に考える暇も与えずゴブリンキングは空中の僕を杖で薙ぎ払い、僕はまた壁に当たった。そしてまたゴブリンが召喚される。今度はホブゴブリンが一体混ざっていた。だが、ホブゴブリンもウルが咆哮を放ちゴブリンの動きを止めた後すぐに対処している。


「折角あいつとの一対一を作ってくれてるのに情けないな僕は。でも近距離ならあいつの体術に気をつければいけそうだ。ホブゴブリンメイジの上位互換って感じならね・・・」


息を整えて、もう一度突撃する。奴は杖を僕の頭上から振ってきたが、それを避けずに短刀を構える。一階層でゴブリンがしてきたように、短刀の角度を変えて杖を往なす。姿勢を低くして走り込み、奴の下へ辿り着き、刃をさっきよりも深く入れることに成功する。それからも重い連撃を繰り返していく。


途中で蹴りや殴ったりしてきたが、ウルに失望されたくないといつも以上に本気になる。その場から跳び退くなど巧みに躱し、その都度もう一度すぐに距離を詰めて攻撃をする。ゴブリンキングが杖を振るたびにゴブリンが召喚されているがほとんどをウルが対応してくれており、ウルが見逃してしまって僕の方に来たゴブリンは、僕がゴブリンキングへの攻撃と同時に空いている左手からファイアボールを放ち対応した。そしてウルも時々手の空いたらゴブリンキングへ攻撃を仕掛けてくれた。


奴の傷が増え、動きが鈍くなってきたのを見て最後の一撃を加えに行く。ウルが咆哮でゴブリンキングの気を引く。その隙に僕は奴の背後まで接近する。地を蹴り、思いっきり飛び込んでその大きな背中に短刀を突き刺す。ゴブリンキングは暴れたけど僕はその背中から離れない。必死に僕を引き剥がそうとしている。傷口からの出血が次第に多くなっていき、ゴブリンキングの動きは暴れているというよりもフラフラに近くなって逞しかった声も今では弱弱しい。そしてゴブリンキングはついに膝から崩れ落ちた。


「ギギャァァ!ギッ・・・」


ゴブリンキングの叫びが消えると同時に奴の首から黒い稲妻が通り抜ける。焦げ臭いにおいと共に大きな音を立てて倒れたゴブリンキングから短刀を引き抜きその場から離れる。ゴブリンキングを一瞥し、もう動かないと確信して僕もその場で倒れた。


「はぁ、はぁ、きっつい。体中が痛いや」


ゴブリンキングの死体が光になると半分に分かれて、半分は箱になり、もう半分はこの部屋に降り注いだ。


「痛みが無くなっていってる?まあ、何にせよ助かったぁ〜」


力が抜けていくのが分かった。そんな僕を見てウルがこちらに駆けつける。僕はウルにポーチに入っている携帯食料をあげて、撫でた。


「ありがとうね。ウルがいなかったらどうなっていたことか。それに情けない姿を見せちゃってごめんね」


それから、少しして箱の中身を見ると、また本が一冊入っていた。本の内容を見るとモンスターの情報が書いてあった。しかも今回は詳細だった。


「ええっと、次のボスは…レッドドラゴンだって!?」


一瞬考えることを放棄していた。詳しく読んでいくと、どうやら次は階層が最終層らしくていきなりボス戦になるそうだ。なら、ここでしっかり休んでおこう。そして、レッドドラゴンの攻撃方法は体全体を使ってきたり、ブレス以外にも火属性の魔法を使ってくるらしい。ちなみに、ドラゴンは色によってどの属性の攻撃を得意としているか分かるらしい。それに外皮はとても硬く、鱗の隙間を狙っても良い攻撃にはならないらしい。有効打を与えるには魔法が付与された武器などが有効らしい。


たしか僕の短刀も魔剣だったよな。一階層のセーフルームで読んだ本にはこの魔剣の能力についても書かれていた。この魔剣は魔力を込めると淡く光り、より鋭さが上がる武器らしい。思い出したついでに僕は短刀に試してみる。けれど何も起こらなかった。まだこの刀の真価を発揮することはできないらしい。けれど、今のウルと僕ならどんな相手だって乗り切れる。そんな自信が湧いていた。


「またキツイのがきそうだ。ウルは着いてきてくれるかい?」


すると、それに反応したように吠えた。それは、僕には優しく聞こえた。


「ありがとう。これからもよろしくね!」

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