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???ダンジョン:第三階層

扉を開けると二度も見た景色に若干飽き気味で見て、いつも通りマッピングを開始する。マッピングをしつつ、壁に違和感はないかどうかも確かめて進んでいるとゴブリンを見かけた。少し焦った。見かけたのはゴブリンはゴブリンでも、ホブゴブリンだった。

完全にただのゴブリンしか出ないと思っていたから混乱した。しかしすぐに、第三階層にもなったんだからこれから普通に出るものなのだ、と思いすぐさま言い放った。


「ファイアボール!」


すると僕の手の平から炎の球が放たれる。


「えっ?」


僕の放ったファイアボールはホブゴブリンの頭ほどの大きさで、着弾すると黒煙がホブゴブリンを包み込んだ。僕は唖然とした。まさか自分がこんなにも大きなファイアボールを撃てようとは一ミリも考えていなかった。そんな様子でいると、ホブゴブリンは黒煙をかき分けてこちらを見つける。すると、大声を上げ怒り狂った様子で突っ込んできた。唖然としていたせいで反応が遅れ、横に飛び込むようにして回避する。着地時に地面に擦られる感覚を味わい、自分の魔法からホブゴブリンの対応に頭が切り替わる。


そして、すぐに態勢を立て直しホブゴブリンを見る。相手は怒ってただ突っ込んでくるだけだ。そのおかげで行動は読みやすく、一階層で戦った時と同じ様に目を狙う。クロスボウで慎重に狙い、矢を放った。矢は目に命中し、苦しんでる内に隙を見て地を蹴って短刀で首を切る。ホブゴブリンが倒れた後、その体はここでは光にならなかった。どうやら光になるのは、あの部屋で出てくるその階層のボスの役割を持ったモンスターだけらしい。僕はホブゴブリンの死骸を観察する。


「ゴブリンの持っていた様なポーチも何も持っていないな。ゴブリンよりも強いから、自分で食料を簡単に取れるからなのかな?途中で兎も見かけたし」


そんな事を思いながらまたマッピング兼セーフルーム探しを再開する。マップを埋めていく中、先にボス部屋は見つけたが、まだセーフルームが見つかっていない。二階層ではモンスターの情報がそこにあったこともあり、セーフルームを意識している。マップピングを終えても見つけることが出来ずに、ホブゴブリンを倒した所まで戻っていた。


「また一から探すのは骨が折れるな。どうしよう・・・ん?」


そこで壁に違和感を感じた。壁に触れようとすると、壁を透けて部屋に出た。戦闘中だったから気づかなかったのだろう。道中、ゴブリンやらホブゴブリンと戦ったりマッピングもしたが、特にセーフルーム探しで気力や体力を持っていかれた。そのせいで部屋に入ったなり、すぐに寝てしまった。


目を覚まし、意識がしっかりしたところで机を確認する。そして本を読むとどうやら今度のモンスターは二体で一セットの様だ。これらのモンスターは一体ずつに分散させて戦うと楽になるとも書いてある。苦労して探した割には情報が少ないな。


「ファイアボールは矢より弾速が遅いし、今回もクロスボウに頼ることになりそうだ。頼りにしてるよ」


クロスボウを優しく撫でる。一通り身支度を済ませてから壁を抜けてボス部屋に向かう。


作ったマップを頼りにボス部屋に着き、ボスの登場を待つ。しばらくして魔法陣が浮かび上がり、モンスターが形になっていく。今回はモンスターが変わっただけでなく、数も三体に増えている。そしてようやくどんなモンスターなのかを認識できるようになった。現れたのは、狼とゴブリン。しかしバラバラに出現したのではなく、ゴブリンが狼の上に乗った状態だった。


「二体で一体ってこういう事か。狼の俊敏さに偏差射撃は結構厳しそうだな・・・」


ゴブリンライダー達は一斉に動き出す。しかもしっかり連携をとっている。僕はクロスボウで矢を放つが、やはりあの速さに中々合わせることができない。そんな中、ゴブリンライダー達は巧みに攻撃を仕掛けてくる。咄嗟に攻撃を見極めて回避する。しかし正面からの攻撃に集中している間に背後から攻撃を仕掛けられ、その連携攻撃に僕は徐々に削られていく。


僕もこれまで戦闘をいくらか経験してきたんだ。背後からの攻撃は音で判断することで、段々とつけられていく傷は浅くしていくことができていた。クロスボウで牽制しつつチャンスをうかがう。


このボス達との戦いはに精神的なダメージが大きい。集中的で連続された攻撃に対応することはできつつあるが決定打を持つことができていなかった。そのせいで焦ってしまい、なんとかクロスボウで一体ずつ処理できないかと次々に矢を消費していく。そして、ついに矢が尽きた。


短刀のみで応戦しようとするもクロスボウを使っていた時よりも上手く戦えなくなっていた。奴らの矢を避ける動きが無くなったせいだ。そうなるとファイアボールを試すしかなかった。一体のゴブリンライダーが僕の真正面から攻撃を仕掛けようとしている。丁度僕の目線の直線上にいる。


「当たってくれ、ファイアボール!」


そう言い放つと、大きな炎の球が僕の手の平から放たれる。すると突然狼の動きが変わった。矢を避けるときは必要最低限の動きしかしなかった狼が、ファイアボールを避けるときには大きく動き、避けた後に少し硬直が生まれたのだ。今のはまぐれかな?もう一度試してみよう。


「ファイアボール!」


すると、先程と同じように狼は大きく避けていた。

まぐれじゃない!炎を怖がっているような避け方だな。そういえば、動物って火が苦手だったっけ。それなら存分に活用させてもらおう!


僕は三匹に向けてファイアボールを放つ。三匹の動きを止めて一匹に狙いをつけて走り込んだ。狼は後ろに飛ぼうとするが僕の方が少し速かった。狼を斬るとその場で暴れて、ゴブリンは地に落ちた。

狼を残すのは厄介だな。ゴブリンは無視してまずはこいつから!


狼が暴れている内にそのまま狼にファイアボールを放った。火は勢いを止めることなく狼を焦がした。

残りの二体も同じように倒す。そして、ただのゴブリンとなった三匹と向かい合う。数の差はあったが速さではこちらが勝っており、難なくゴブリンを倒していく。


最後の一匹を倒し、全ての死体が光となって集まり箱となった。箱を開けると一冊の本が入っており、手に取って読んでみる。


『召喚魔法とテイム』

「まず、召喚魔法についてだが、これは適切な魔法陣を描き、魔力を注ぐことと行使する者がその召喚に必要な魔力を持っていることが絶対の条件となっている。複数人で行うと、より効率よく進めることができるだろう。召喚魔法とはその名の通り、対象を呼び寄せる魔法であり、対象の意思に関係なく行われる。よって、召喚した対象が魔物の場合、行使者が突然襲われるのは当然だ。召喚魔法を行使し、魔物を呼び寄せる場合といえば、その魔物をテイムする場合であろう。テイムとは対象の意思のもとで行われる契約である。しかし、酷いときには召喚者に従わざるを得ない状況にしてから契約させる、という場合もある。とにかく、テイムを使うときは仲間を欲している場合が殆どだ。よって、召喚魔法はテイムと相性が良いのだ。テイムの方法は、例えば魔物を仲間にしたい場合、召喚魔法の行使者がその魔物を屈服させた後に魔力を魔物に流すことで成功する。知能の高い魔物なら契約の条件を決めることでテイムすることもできる。召喚魔法は幅が広い魔法である。建物や地形もそれ以上のものでさえ、適切な魔法陣を描くことができれば可能だろう。この本にはある程度の動物や魔物の魔法陣を載せておく。良かったら使ってくれ」


ページを送ると確かに様々な魔方陣が載っていた。ウサギやらゴブリンと色々載っていた。


「へえ、召喚魔法って便利そうだな。魔力の流し方もファイアボールと最初の部屋の本で感覚的に分かる気がするし、丁度今、狼の強さを知ったから狼を召喚してみようかな。狼の魔方陣はどこかなっと・・・あった。ん?でもこれ魔物化した狼って。こんなのもあるんだ。気になるし、一匹くらいなら何とかなりそうだな。試しに呼んでみるか」


僕は本に書いてある通りに指で地面に魔法陣を描いていき、完全に感覚だが魔力を流す。すると、ボスが出てきた時と同じ様に魔法陣が光だし、そこから姿を現す。それは黒い毛をした狼だった。


狼は傷ついていたが、こちらを認識すると襲いかかってくる。僕はこれに冷静に対処する。狼をなるべく傷つけないように動いていると、狼は距離を取って攻撃を止めた。このまま長期戦をすれば自分が負けることを悟ったのだろう。こちらの様子を見てくることが多くなった。その様子を見て僕は手の平を狼に向けた。

今ならいけるのかな。魔法陣に流した感覚で今度はあの狼に・・・


すると、狼がゆっくりとこちらに向かってくる。テイムに成功したかと思ったが、念のため短刀を構えておく。そして短刀の届く距離まで来たが攻撃を仕掛けてこない。


「成功、した?」


試しに撫でてみる。撫でられた狼は何の抵抗も見せない。


「やった!成功したんだ!ここに来て何日経ったか分からないけど一人は寂しいってこんなに思ったことなかった。やっと一人から解放されるんだ。そうだ。名前つけないとな。単純かもしれないけど、今日から君の名前はウルだ。よろしくね!」


だけど、ウルはそっぽを向いて反応しようとしなかった。


「まぁ、そんなすぐには懐かないよね・・・」


少し、いやとても悲しい。

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