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日本を滅ぼした1929年の汚職

作者: ふりがな


最近書いた作品で、ドイツのハイパーインフレとジンバブエのハイパーインフレでは、経済の原理ではなく、むしろ汚職が決定的な役割を果たしたのかもしれません、と書かせて戴きました。

では、本当に汚職が国を潰す事があるのか?という本作品の趣旨となります。


一応経緯はあるのですが、中々過激なタイトルとなりました。


さて、世界汚職ランキングという物がありまして、最下位になってる国を傍目に見ましても、別に潰れてはいないのかなと、私はまず思ってしまいました。


その最下位の国とは、167位ソマリアと同率北朝鮮となります。


汚職が最悪でも、国として残ってるという結果ですね。


まぁ、ソマリアは無政府状態の港町が海賊行為に走っていると言われているので、潰れていると言えるのかもしれませんが。


話題のジンバブエは150位。

昨今ハイパーインフレになったベネズエラは158位です。

汚職のせいで、政治経験0の人気コメディアンが大統領になりそうな、ウクライナは130位。


丸山ゴンザレスさんが、マリファナで取材したジャマイカでは、警察が賄賂でマリファナパーティーを見逃して居ましたが、69位。

正直、ジャマイカより下となると、我々には、どのくらい汚職が蔓延しているのか想像もつきませんよね。


北朝鮮の経済と言えば意外と成長しているようで、一部の国民は携帯電話も持っているようです。

2009年の同国のデノミも、経済は順調で、タンス貯金が増えすぎて、国民が力を持ちつつあったからと言われています。


と言うことで、汚職は必ずしも国を滅ぼすとは言えないというのが、実情のようです。

もちろん、経済と汚職の関係は、従来通り相反する負の関係として知られてはいますが。


さて、日本ではこの汚職、どのように考えられているのかという事で、さっそくググってみました。

そう言えば、Google検索、非常に劣化しましたよね、どうでも良い情報しか出ないので、正直驚きました。


検索の結果、見つけたのが「汚職は国を滅ぼさないが、正義は時に国を滅ぼす」という故山本夏彦さんの言葉でした。


――政界は最下等の人物の集りで政党は腐敗の極に達し、その領袖は財閥の走狗であり利権の亡者だと毎日のように書いたから、当然それをまにうけるものが生じ、そのなかの一団は犬養毅を浜口雄幸を高橋是清を殺した。義によって殺したのだから彼らは俯仰天地に愧じなかった。当時も汚職はあること今に似ていたが、汚職は国を滅ぼさないが、正義は国を滅ぼしたのである。


515事件や226事件、血盟団事件をもってマスメディアの批判に使われた、この教訓ですが、なるほどと思う方も居れば、違うなと思う方も居ると思います。


私は後者の方です。


当時の背景ですが、大戦の好景気の反動、つまり過剰投資の尻拭いをしている最中、経済の中心である東京神奈川を、震災が襲います、関東大震災(1923)です。

この二つの要素によって日本は、今で言えば、バブル崩壊(1991-1993)並の、多額の不良債権を抱えてしまいます。

この後の長い不況を、昭和恐慌と呼びます。


折しもこの時期は、本格的な政党内閣が、ようやく発足し始めた時期でした。

この時期を見ると、政権交代は良くあり、それによって対極的に相反する政策が行われるなど、まるでアメリカの二大政党制を思わせるような、ダイナミズム溢れた政治が行われています。

緊縮財政と対外協調の憲政会と、積極財政及び積極外交政策の立憲政友会なんかは、完全に真逆の主張ですよね。

ここら辺の政策対立は、今日の日本も変わらないように思います。

ファシズムに至った結果論から、結局二大政党制に似たような制度は、日本にとって、どうだったのかなとは思いますが。


そして、当時は、政治に関わる大きな勢力がありました、軍部と枢密院、そして官僚です。


それらの勢力は、与党の出す政策によっては、野党と協力し、与党を攻撃し倒閣させてきました、戦前は短命の内閣が続きます。

影で動くお金は莫大な額となり、汚職として、やがて日本に蔓延していきました。


不良債権問題から、デフレに突入するのは、この時代も変わりません。

当時は、デフレをただの景気循環として、放置、または利用して、体力の無い中小企業を倒産させ、代わりに財閥を時には優遇援助し強くしていく政策が取られました。


そして、裏金の蔓延る政界が協力出来ず、互いに足を引っ張り合い、財閥の優遇される慢性的なデフレ不況の中、致命的な出来事が日本を襲います、世界恐慌(1929)、そして昭和農業恐慌――豊作飢饉(1930‐1931)です。


更に、この時期は対外政策も奮いませんでした。

ロンドン海軍軍縮条約(1930)

これは、皆さんもご存知ですね。

5.15事件のきっかけになったとも言われる条約です。


さて、ここで、この頃の主要な日本の汚職事件を検索してみましょう。

Wikipediaから転載してしまいます。


1924年(大正13年) -復興局疑獄事件

1926年(大正15年) -松島遊郭疑獄事件

1929年(昭和4年) -五私鉄疑獄事件

1929年(昭和4年) -越後鉄道疑獄事件

1929年(昭和4年) -売勲事件

1930年(昭和5年) -京成電車疑獄事件


世界恐慌の始まる1929年に集中していますが、アメリカの株価が歴史的な暴落をするブラックチューズデーは10月です。

つまり、よりにも寄って、世界恐慌前夜に、偶々、歴史に残る、これらの汚職は多発しました。


翌年、日本史上発の豊作飢饉(1930)が発生。

これには、所得格差の大きい大陸産の米を、政治上層部と繋がりの深い政商が、国内に売り捌いた影響もあると言われています。

そして、米価も戻らない更に翌年(1931)東北を不作が襲い、只でさえ、立ち直れない農家に大きなダメージを与えます。


これが昭和農業恐慌です。


そして、正義が国を滅ぼしたと指摘される、血盟団事件(1930)、5.15事件(1932)は起こります。


5.15事件を切っ掛けに、陸軍が政党内閣に反対。

日本の政党政治は力尽き、軍部・貴族院・官僚・政党から閣僚を選ぶ、挙国一致内閣が成立しました。

この後、日本は徐々にファシズムへと切り替わっていくのです。


私は、ここから幾つかの教訓を得ました。

まず、正義云々ではなく、間違ってもクーデターを起こされるような汚職はするな、という物です。


私の勤務先に、サボりもまともに出来ない同僚がいます。

その同僚は、忙しい時も、暇な時も、変わらず同じ時間をサボり挙げ句はバレるのです。

サボる事にも最低限の能力がいるという事です。

それは汚職でも一切変わりません。


汚職をするにも、時と場合を考えなければなりません。


例えば、あなたが、パートナーの財布に、100万円入っているからといって、いつも、1万円をくすねているとします。


汚職をするに、最低限の能力が無いというのは、いつもくすねているからといって、パートナーの財布に1万円しか入っていない時に、1万円をくすねる事を指すのです。


そんなバカがいったい世界のどこに居ると言うのでしょう。

もっとも、私はその手の人がよく居る事は承知していますが。


市民が困っている時に、慣例となっているからと、質の変わらぬ汚職をするバカは、実際には多いのです。


これを、『汚職は国を滅ぼさない、正義は時に国を滅ぼす』と置き換えると、『女房の財布から金をくすねても、決して離婚騒動にはならないが、女房のヒステリーは時に離婚騒動になる』となるのです。

因果関係を考えなければ、教訓になるかもしれません、元はマスメディアへの批判ですから、故山本氏を批判する物でもないのです。

これは背景もなく、ただ真に受けた層が、ネット上には多いように感じた事への批判です。

そもそも、マスメディアの汚職とは、何なのかを一度考えた方が良いでしょう。


汚職の例ではありませんが、少なくとも20%が餓死、もしくは病死した、アイルランドのジャガイモ飢饉で市民が困っている時に、飢饉に苦しむ市民らは何をして欲しかったのでしょうか?


ただ、税を止めて欲しかったのでしょうか?


困った時に彼らが必要としのは、税を止める事ではなく、援助だったのです。


当時、5.15事件前夜に必要だったのは、市民が困っている時に汚職を止めるだけでなく、むしろ、普段汚職をしている分、援助する事ではなかったのではないか、と私は思います。


汚職は、時に組織や国を滅ぼす。


汚職をするにも、時と場所を考えろ。


バレるな。


普段汚職をしている分、人が困っている時は、援助しなければならない。


汚職をするなら、是非とも教訓としたい事ですね。


そして、汚職利権は、能力も考えずに引き継がれている物なので、国が傾いている時には、国が滅びないように、司法当局は汚職の当時者に変に過度な期待をせずに、普段お目こぼししている分を、冤罪でも良いので、ほとぼりが覚めるまで、怪しい人には、牢に入っていて貰う。

それが、最終的には汚職をしている人を守る事にもなる。


もしくは、隠して完全になかった事にする。


こちらも、教訓にしてみて良いのではないでしょうか。


人によって得られる教訓は違う、好例となりましたね。


さて、恐慌前夜1929年の汚職という事で、ダン・アリエリー氏のずる嘘と誤魔化しの行動経済学から、何故、この時期に多発したのか、予測出来るよう不正の要因を、過剰書きにしたいと思います。


・正当化の能力

・利益相反

・創造性

・一つの反道徳的行為

・消耗

・利他的不正

・他者の不正を目撃する

・不正の例を示す文化


逆算すると、例えば官僚制度を腐敗させるには、不正を助長する政党イデオロギーに汚染させ、慢性的に消耗させ、市民と利益相反の権益構造を作り、不正をする人材を送り込み不正を見せ、その人の得にならない不正に協力させ、何でも良いので一つの反道徳的行為を誘う等すれば良いことになります。


当時、どんな事があったのでしょうね。


最後に、タイトルの由来ですが『汚職は国を滅ぼさないが、正義は時に国を滅ぼす』を単に対にした物です。

血盟団事件と5.15事件を指して、正義が国を滅ぼしたとするのに、正義ではなく、汚職が日本を滅ぼしたとしたのなら、それは1929年の汚職の事なのです。


汚職と中東欧の話でググると、実際の汚職と庶民の持つイメージは、乖離している上に、選挙にとても影響を与えていますよという内容の記事が見れます。


とても良い記事なのですが、リンクして良いのかな。


汚職って面白い題材ですよね。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  面白い話を見つけた! [一言]  穿ってますね。    昭和最大の汚職事件『ロッキード事件』でも国は滅んでませんが、少しタイミングが悪ければ………日本はテロ戦争に突入したかもしれませんね…
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