098
中本は嘘をついているようには見えない。
少なくとも、ここではすべて本当のことを話している。
彼女の感情や、彼女の言葉に嘘はない。
手をほどかれた俺は、目の前の中本を見ていた。
「中本の気持ちは、よく分かった」
「ならば……」
「それでも、俺は若葉を呼べない」
俺はそこでも、中本の要求を否定した。
それと同時に、中本は俺の手を振り払う。そのまま俺の頬を平手打ちだ。
「なんでよ?あなたはバカなの?」
「再葉は俺の彼女だ。彼氏が彼女の思いを……」
「あなたは、若葉が何をしたのか知っているの?再葉に対して」
「あの爆弾は再葉が望んでしたことで」
「それは違う。若葉は再葉を消し去りたいのよ。
若葉の一族は、不死者を殺す一族だから」
「なんだそれ?」
「若葉の家、四十万家はもともと不死者を殺す代々の一族。
しかし、雲吞に寝返った女。彼女は常に裏切りをして生きてきたのよ」
中本は、バカにしたように言っていた。
「若葉が?」
「そう、彼女は打ち手。彤弓は、四十万家の伝統の弓。
あの弓は、不死者の体力を一時的に奪う弓なの」
「時間逆流じゃないのか?」
「それは永遠に治らないし、治すことは不可能。
全ての人間には、時間が流れていてそれを止めることはできない。
たとえそれが、不死者を止める四十万一族といえどもね」
その言葉に、俺は疑問があった。
(若葉は、再葉をどう思っているのだろうか)
若葉と再葉は、全く血がつながっていない。
だけど、一つ屋根の下で若葉が再葉を育てているような環境だ。
若葉のいる『ユズリハ』も、正直詳しい陣容はわからない。
勧誘だけはされたのだけど、俺は保留していた。
「あなたは若葉を信用しているの?」
「それは……」
「信用していても、していなくてもいい」
そんな俺らの前には、一人の男が現れた。
それは、鼠色のスーツを着た男だった。
拳銃を構えて、ゆっくりと現れるその男には強い殺気が感じられた。




