086
俺は中本 芙蓉とは、出会ってまだ一か月程度だ。
しかも転校初日から、中本を姫扱いしていた。
再葉のことを人質にして、俺をゆすってきた。
再葉のことを知りたかった俺は、中本に従っていた。
そんな関係性だ、彼女に対しての信用はない。
「いや、特にない」
「あらそう」
「まあ、そうだな」
「再葉は、タワーから飛び降りたのでしょ」
「知っていたのか?」
それはニュースにもならなかった、俺が見た現実。
だけど、誰もその話をしても信用しない再葉の事実。
「ええ、それはとても悲しいことだわ。
彼女は、自分の運命を受け入れなかったのね」
「あんたは?もしかしてそっち側の人間か?」
「そっち側?私がそう見える?」
中本の態度に、俺は警戒した。
俺が知っている美来や、香音は、まるで別の世界の人間のようだった。
その中心に再葉がいるのはわかっている。
だけど、俺は裏の世界の人間ではない。
「誰かにそんな話を聞いた?」
「若葉さんから聞いた」
「若葉……なるほど」
なぜか不敵な笑みを浮かべた中本。
俺は一つ確信した、中本も美来や香音と同じだ。
だから、俺とは違う人間だとわかった。
「俺が再葉を探していること、若葉を知っていること。
あんたは何者だ?」
「そのくくりで言うならば、あなたと同じかもしれないわね」
「何?」
「再葉を探し求めているの、あなたと手を組んで探そうと思ったけど……」
そんな中本が、突然俺に背を向けた。
「今回は、これで終わりにするわ。
残念ね、もう少し私はあなたと遊べそうだと思っていたのに」
そのまま屋上の出口に出ていった。
俺は、その時気づかなかった。
そこに、一人の人間が見ていたのを。




