085
俺は、その日の放課後屋上に来ていた。
本来は、中本に呼ばれても行く理由がない。
だけど、俺は行くことにした。
はっきりと俺は、中本に従わないことを報告しないといけないからだ。
「来たぞ」放課後の屋上は、アスファルトが暑い。
夏の日差しに照らされて、熱せられていた。
「あら、よく来てくれたのね」
「俺は、もう再葉の情報はいらない」
「再葉に会えたの」
「まあ、そんなところだ」
「へえ、いいわね」
中本が、抑揚ない声で言っていた。
「あの子、小学校のころから変わっていたから」
「中本は、もしかして再葉を探しにここに来たのか?」
「あら、ばれちゃった」
そういいながら、中本はスマホを俺に見せてきた。
スマホを操作して見せたその写真は、三人の小学生の女の子。
一人は中本の面影があり、もう一人は再葉の面影がある。
だけど、最後の一人は誰だろうか。
髪が短い女の子、どこかで見たようだけどそれが誰かわからない。
「これが昔の私たち。再葉もかわいいでしょ」
「本当に、幼なじみなんだな」
「ええ、あの子はとても恵まれた子だから」
「恵まれた子?」
「そう、再葉は優秀だったから。
勉強もできて、運動神経も抜群で」
中本が、再葉の自慢を話していた。
そんな俺は、中本を見てあることを思い出した。
(中本は、再葉は普通ではないことを知っているのだろうか)
若葉が教えた再葉は、全く持っておかしい人間だ。
時間逆流に、不死者。
それでありながら爆弾をつけてタワーを飛ぶ、普通ではない女の子。
だけど、俺はそんな再葉でも嫌いになれない。
「どうしたの、健斗?」
「ああ、いや……」
「ふーん、そうね。何か隠しているでしょ」
「え?」中本はじーっと、俺の顔を見上げていた。
俺と同じぐらいの背丈である中本が、体を曲げて俺を見上げていた。
そんな中本は、ずっと俺を見ていた。
「そう、私でよければ相談に乗るよ」
中本は、俺に笑顔を見せていた。その笑顔は、なんだかまぶしく美しかった。




