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今日の芙蓉は、珍しく俺と別々に来ていた。
それは、前日のラインにメッセージがあったからだ。
中本が、こんなことを言うなんて珍しい。
最も、遅刻するかもという理由つきではあるが。意外と遅刻なしで中本が現れた。
「本郷君、ほら姫だよ」
「投げやりになるなよ、飛鳥」
「そうだね」だけど飛鳥は、中本を気に入っていないようだ。
「まあ、そういわないで。用宗さん。
私と健斗は、そういう関係じゃないから」
「そうなの、ケンタ?」
「うん、特別な関係ではない」
「将来の婚約者よ」
そういいながら、中本が俺に抱きついてきた。
だけど、今の俺はそんな中本に凛とした態度で挑む。
「これ以上、俺に絡むな」
「あら、どうしたの?」
「中本、あまり俺になれなれしくするなよ」
それは俺が、強張った顔を見せていた。
そもそも中本に従っているのは、俺は再葉のことを知らないからだ。
知って、出会った以上中本に従う必要性がない。
「そう?健斗」
「ああ、俺は中本のことは嫌いじゃない。
だけど、すごく好きでもない。少しはベタベタするのをやめてくれないか?」
「そう、わかったわ」
中本は、意外にも冷めた様子で俺から離れていく。
「でも、いいの?」
「何がだ?」
「そんな露骨な態度したら、私は困っちゃうなぁ」
甘えた声を見せてきた中本。中本が、俺の耳元でささやく。
「ねえ、あなたに確認したいことがあるの。
放課後、屋上でお話をしない?」
そう言い残して、中本は俺から離れていった。
それからその日は、放課後まで中本が俺に絡んでくることは一度もなかった。




