083
翌日の朝、俺は学校に来ていた。
昨日のあの銃撃戦は、たちまちニュースになっていた。
近所のニュースは、学校の噂になる。
学校の教室にいた俺は、その噂を聞かされることになった。
「昨日、銃弾が住宅街で聞こえたって。
どうも打ったのは、軍人みたいで」
「その話、何回目だ。隣町だろ」
「まあ、そうだけどね。でもすごく物騒だよね」
俺の机に来ているのは、飛鳥だ。話している飛鳥は、どこか嬉しそうだ。
その現場は、まぎれもなく俺がいたあの場所だ。
昨日の夜に、車に打ち込まれた銃弾。
その銃弾を、近所の住人が目撃された。当たり前だがそこから警察に連絡があった。
美来は、倒れた軍人を置いて俺たちは逃げていった。
「逮捕されたのは、中国人よね」
「ああ、そうらしいな」
捕まった人間は、中国人だった。
俺は、車の中で隠れていただけなので細かいところは見ていない。
ただ、車が突然発進して俺のいるマンションに向かった。
スマホで、香音がどこかに電話していたが詳しいことはわからないままだ。
「住所不定の中国人、怖いわね」
「ああ、恵理那か」
そこに出てきたのは、クラス委員の恵理那だ。
いつも通り、長い髪の恵理那が不安そうな顔を見せていた。
「まあ、それはそうだよな。そんな中国人が、町の中にいたら怖いもんな」
「ねえ、本郷君は守ってくれるの?」
「え?」
「私たちや飛鳥が、そんな中国人に襲われたりしたら?」
「うーん」
それは言えない。俺は昨日の軍人に出会い、何もできなかった。
俺は、普通の高校生だ。
美来と違う。
再葉とも違う。
住んでいる世界が違う。
絶望的に、世界が違うのだ。
そんな人間に、俺は何かできるのだろうか。
俺のような普通の人間は、無力でしかない。
「俺は助けるとか言えない、一緒に逃げると思う」
「そうなの……そうよね」
なんだか、恵理那が少しガッカリした顔を見せた。
隣の飛鳥も、俺の顔を見て冷たい目線を送る。
「そんなものは……」
「おはよう、みんな」
そんな時、教室に一人の女子が入ってきた。
それは中本 芙蓉。俺が姫と呼ぶ女が現れた。




