082
銃声が聞こえたのは、二度目。
俺は思わず身構えた。
その銃弾は、車の前で跳ね返っているのが見えた。
「ひいっ!」
俺は、思わず身をかがめてしまう。
普通の人間なら、銃弾の一発を見ただけで身をかがんでしまう。
「出てきたわね」
周囲を見回す美来、目を凝らしてみていた。
その次の瞬間、美来が飛んだ。
驚くほど速いスピードで、道路を駆け抜ける。
それは電柱の影だった。
影にいた一人の人間が、背中を向ける。
だけどすぐさま美来が、背後によじ登っていた。
小さな体で、素早い速さであっという間に電柱に隠れた人間の上に上る。
陰に隠れていたのは、兵隊服をきた人間だった。
迷彩服で、長い銃を持っていた。
「表に手を出すな!」美来が、そのままよじ登って右手を振り上げた。
「……」
登られた兵隊風の人間は、顔にマスクをしていた。
頭にはヘルメットのようなものも、つけている。
そのまま、銃を蹴飛ばした美来。
「仲間はいるの?」
「……うぐっ!」
そのまま、軍人が美来の一撃で倒れてしまう。
倒れた軍人のヘルメットが、衝撃でヒビが入っていた。
「ちっ、逃げたか」
美来が見ている先には、すでに遠くに離れる人影が見えた。
どうやら、もう一人の仲間と思われる人間はすでに離脱している。
「美来様、どうでしたか?」
「ダメね、逃げられたわ」
車外に少し遅れて出てきた香音に、美来は悔しそうに答えた。
「そう。仕方ないわね」
「それより、あの中の子はどうするの?」
「彼は返します。今は危険すぎる」
怯えて助手席の下に隠れた俺に対し、何かうわごとで話が行われていた。
俺は、結局あの後怯えることしかできなかったのだから。




