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俺は今までのことを思い出して、理解できなくはなかった。
再葉の発作に美来の姿。
それは、いろんなことが起こって理解に苦しんでいた。
「不死者?」
「死なない、老いの来ない人間よ。
時間逆流で、不死者は死なないの。
強力な身体能力を得ることで、屈強の肉体を手に入れる。
その代わり、死ぬよりも辛い苦痛を永遠に浴び続けないといけない」
「それが、再葉と美来か」
「再葉の方が、美来よりもはるかに苦しいの。
それは間違いないわ。美来と違って再葉は成功したから」
「なんだか、全くピンとこないな」俺が首をひねった。
「今ここで話していることはすべて事実で、間違いではないの」
「それで、再葉が記憶を失うこととは?」
「再葉は、その不死者の運命から逃れるために自分の体に爆弾を仕掛けた」
「爆弾?」
「本郷君、あなたは見たのでしょ。
再葉が、タワーの上から爆発をしたのを」
「そうだ、爆発したんだ」
俺はこの目ではっきり見て、覚えている。
タワーの上から、爆発をしたのを俺は知っていた。
「あれは、一年後に爆発するあの時限爆弾。
再葉が自ら取りつけて……あそこから飛び降りたの」
「そんなことって……」俺は自然と涙が出ていた。
それは俺が、最初に再葉と別れたあの日。一年彼女最後の日だ。
再葉は飛び降りて、若葉のキスで忘れた記憶。
思い出すだけで、俺は涙が自然と出てきた。
「泣いているわよ」
「ああ、すまない」
美来からハンカチを受け取って、涙を拭っていた。
そのまま、俺は美来を見ていた。
「あの爆弾は、なぜ再葉がつけたんだ?」
「終わらせたかったのよ、永遠にくる苦痛を」
「時間逆流か」
「そう、あの苦痛は普通の人間には味わうことのない辛さ。
手のすべての爪をはがされて、全身をナイフで切りつけられるような痛み。
苦しみは、永遠に解放されることはない」
「だから爆弾を?」
「そう、一年後に爆発する爆弾『リセット』を体に埋め込んだの」
美来の言葉に、俺は親身に聞いていた。
再葉が自分の体に爆弾を仕掛けて、俺と付き合っていた。
それを知った瞬間、俺は胸が苦しくなった。
俺は再葉の苦しみを、全然理解していないのだと思い知らされた。
そんな俺が乗っている車は、あるアパートの前に止まった。
それは香音のいたアパートだ。
「ここって……」
「ここは私の家なの」
若葉が紹介するが、美来は引き戸の車のドアを開く。
「いったん離れて、敵がいる」
そういいながら、車の外に飛び出た美来は険しい顔で車の外に出ていた。
それと同時に、バキューンと大きな銃声が聞こえてきた。




