007
再葉が急ぐ理由は、少しわかった。
元々話したことがあまりない、俺と再葉の関係。
だけど、話すことで少しずつだけど彼女を理解していた。
「一年しかない?」
「私は一年だけなの」
「なぜだよ?何か病気とか?」
「そうですね、そうしておきましょうか」
再葉は頑なに、拒否をする。明らかに、俺にいろいろと隠し事があるようだ。
口を結んで、俺をじっと見ていた。
そういうところは、頑固なのかもしれない。
頭をかいた俺は、あることを口にする。
「付き合ったら、教えてくれるのか?」
「それは運命ではありません」
「また、運命かよ」
なんだか、頭が痛くなってきた。
こういう人間と話すのは、初めてだ。
不思議というか、コミ障というのかわからなくなっていた。
それとも、誰かの意志で再葉がしているのだろうか。
「もういい、俺は帰る」立ち上がった俺。
「健斗……ダメ」再葉が、俺を引き留めた。
女性にしてはとても強い力で、立ち上がる俺にしがみついた。
やはり腕力は強い、彼女の力に俺は首を横に振る。
「そんなもので、俺は……」
「私は、なんでもする。だから私の彼氏に……なって」
俺に対して再葉は泣いていた。泣いたまま、俺にしがみついていた。
その顔を見て、俺はじっと再葉の顔を見ていた。
強気で、根暗な再葉の顔は、涙の顔でかわいく見えた。
それと同時に、俺の胸がなんだか熱くなった。
(マジかよ、俺が)
それはいつも話している女子には見せない、不思議な感情だ。
言葉にすると、それは恋のような感情だろうか。
だけど、心の闇の中でモヤモヤしていてそれが割り切れなかった。
「お願い、お願いっ、本郷君っ!」
四十万が涙声で、俺に迫ってきた。
その顔や、強い声は、ただ一人俺に向けられたものだ。
「ああっ、わかったよ。わかった!だから腕を放してくれ」
俺は観念したように、首を横に振っていた。
そのまま、腕をつかんだ再葉は俺をじっと見ていた。
「では、私に言葉をください」
「ああ、再葉」腕が解放された俺は、再葉の肩に手をのせた。
そのまま、俺は小さく咳をする。なんだか緊張してきた。
胸の動悸が、どんどん激しくなる。こういうことは、小学校の時に全校生徒前で歌を歌わされた時以来だ。
形式のような告白とはいえ、こういうものは緊張する。
適当にやるつもりは、俺にはなかった。女はそういうのを見破るのがうまいのも、身をもって知っている。
「再葉、俺と付き合ってくれ」
俺は言った、再葉は俺の言葉を大きな目を開けて聞いていた。
だけど、すぐに返事をしない。
数秒、いや一分ほど余韻に浸っているのだろうか。
「うん……一年だけなら」
俺の告白に再葉は、照れくさそうに頷いていた。
彼女の顔には、すでに涙がなかった。
「じゃあ、俺はこれで」
「明日……デートに行きましょう」
「え?」告白された再葉は、とっても積極的だった。




