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一年彼女  作者: 葉月 優奈
五話:一年彼女のいない世界
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恵理那は、高校に入ってからの知り合いだ。

そんな恵理那は、俺に告白をした。去年の修学旅行の丘での話だ。

俺は恵理那に、返事を返していない。

香音の妨害があったが、恵理那を俺は救わなかった。


「恵理那」

「四十万さんは、本郷君によって大事な人だったんだな」

「ああ、そうだな」

「うれしくて、悲しくて……私」

「恵理那、泣いているのか?」

恵理那が繁華街の道端で、涙を流す。

その光景を見て、通行人がこちらをチラチラと見ていた。


「落ち着けって、恵理那」

「だって、私……本郷君をやっと諦められるもの」

「あきらめる……か」

俺は恵理那の言葉を、少し理解できた。


俺は、諦めが悪いだけなのかもしれない。

いるかもしれない再葉を、今でも追いかけている。

俺も、再葉をあきらめた方がいいのかもしれない。

前に進んだ方がいいのかもしれない。

そんな涙を流す恵理那を見て、俺はハンカチを出す。


「涙、ふけよ」

「でも……ありがと」

恵理那が俺のハンカチを受け取って、涙をぬぐっていた。


「私は、あなたのそういうところが好き。

私が会った、初めての怖くない男性」

「怖くない男性?」

「私、男性苦手だったの。男性恐怖症っていうの。そういうやつなの。

男の人が、手を挙げただけで怖い……怖いの」

震えている恵理那。顔も青ざめていた。


「なんでそんなに?」

「私のかつての父は……私に手をあげていて……苦痛の人だった。

私も母も逃げてきたの」

「そうか」

恵理那はそういう過去があったのか。

そういえば、恵理那は他の男子と話したことを見たことないな。


「今は、本郷君以外にも男性と少しずつ話せるようになったから」

「なら、いいな」

「だけど、あなたが苦しいのは嫌なの」

それは恵理那の言葉だ。

恵理那も響もそうだが、俺はそんなに苦しそうなのか。

そういう顔を、俺は出してしまっているのだろうか。


「わかった、ありがと。俺は元気だ。

恵理那にも、心配させてすまなかった」

「そう、ならばよかった」

「それにしても、四十万さんって転校したのよね」

「どうした?」

「いえ、なんでもないわ」

恵理那はそんなことを言いながら、スマホを見ていた。

スマホの時間は、夜十時を示していた。


「あ、こんな時間だから迎えが来るから。帰るわね」

俺に手を振って、恵理那は離れていった。



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