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一年彼女  作者: 葉月 優奈
五話:一年彼女のいない世界
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香音は俺の前で、驚きの言葉を口にした。

だけど、次の瞬間とても気まずい顔を見せた。


「香音」

「今のは忘れて!無しで、ナシナシ」

そしてこの慌てようだ、普段の冷静な香音の顔は驚いているようだ。


「香音、知っているのか?再葉の居場所を」

「香音は何も知らない、何もわからない」

「さっき言ったのは嘘じゃないだろ、香音」

「もう、関わらないで!」

はっきりと言い放った香音。

だけど、隣で見ている響は香音の方を見ていた。


「再葉の居場所が、香音はわかるの?」

「知らない、なにも……」

「嘘をついているわね」

「ついていない」

だけど、香音の目は明らかに泳いでいる。

こんなにもわかりやすく誤魔化そうとしているのは、いつも冷静な香音らしくない。


普段は、おとなしく冷静。

周りの人間と馴染めず、一人を好む香音。

少し再葉に似ているけど、もっと冷静だ。そんな香音は、俺らに背を向けていた。


「もう、こないで!」

「それはできない。俺は、どうしても再葉に会わないといけないから」

「無理なものは無理よ」

「それでも、俺は会いたい」

再葉につながる唯一の手がかりを、俺はようやく見つけた。


あのタワーから飛び降りても、再葉は生きている。

再葉は普通の女ではないことは、俺も知っている。

だとしたら、僅かな可能性も存在するだろう。

何より、再葉の死体が地上に落ちていないのだから。


「再葉は、あなたを巻き込みたくないのよ。

彼女の願いを、あなたはどうして聞いてあげてくれないの」

「俺は、それでも再葉に会いたいんだ」

「なんで?」

「再葉の彼氏……一年だけだけど、そうじゃない。

俺はそれを望んでいないんだ、再葉ともっといたい。

ずっと一緒にいたいんだ」

「そのことを、再葉に言ったの?」

「それは……」

確かに言えなかった。再葉に対する、俺の気持ち。


俺は再葉に惹かれていって、好きになっていた。

彼女に触れて、彼女の良さを知った。

知ったからこそ、失いたくないとその気持ちが芽生え始めていた。

だけど、俺はその気持ちを口に出さなかった。


「だから、再葉はあなたから離れたの」

「でも今は、好きだ。

いや、あの日だって再葉を失いたくなかった」

「そう、それでも時間は戻らない」

「わかっている、俺は再葉に会って、もう一度チャンスが」

「絶対に会わせない。あなたはこの世界に来るべきではないから」

「香音、最後に……ここに再葉がいるのか?」

俺の言葉に、香音は首を横に振った。


「ここは香音の家だから」

と最後に俺と、響を追い出すように手を払っていた。



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