063
ショートツインテールの香音は、再葉の親友だ。
俺の知らない再葉も、香音は知っている。
そんな香音は、俺が近づくとすぐに逃げる。
再葉がいなくなったあの日から、どこかよそよそしい。
そんな俺は、夕方になって隣町の住宅街にいた。
ここは、磐田の市街地だ。掛川の隣にある町。
バスに乗って、ここまでやってきていた。
「ねえ、本当につけるの?」
「ああ」
俺の隣には、響もいた。
放課後になって、響がなぜか俺につけていた。
電柱に隠れて、俺は香音を尾行していた。
制服の香音は、ぼんやりと歩いている。
「香音は、俺を避けているからな」
「だからといって、こんなことして」
「俺は再葉のことと同じように、香音のこともわからないんだ」
「どういうこと?」
「俺は一度、記憶障害になった。
その時、香音と再葉と若葉がそこにいたのだけど……この三人は俺に何か秘密を隠している。
再葉と付き合っている時は、そこまで考えなかったが。
香音は、何かを知っていると思うんだ。
あの再葉が、急に飛び降りたりしない」
「その話、本当なの?」
響も、どうやら深刻な顔を見せていた。
俺は、知っていること、思い出したこと全てを話した。
この前のデートのことも、話している。
そんな香音は、曲がり角を右に曲がっていた。俺と響は電柱伝いにつけていく。
「それを確認したい。俺は目で見たことも理解できない。
香音が、俺にとって最後の希望だから」
「わかった、あたしもつき合う」
「本当にいいのか?」
「うん!あんなケンを、見ていられないから」
「そうか、助かる」
俺は響を、拒む理由はない。
正直、自分一人では理解におぼつかない部分もあるだろう。
それだけ再葉や香音の裏にある闇が、何かとんでもないもののように思えたからだ。
「あ、あのアパート……」
「ああ、行くぞ」
そんな俺の目の前では、二階建てのアパートに入っていく香音の姿が見えた。




