060
あれから二時間後、若葉の車は高速道路にあった。
夜の高速は、車が渋滞していた。事故が前で起きていて、渋滞が十キロ続いていた。
俺は助手席で、再葉の隣で呆然とした顔を見せていた。
「ごめんなさいね、渋滞が長くて」
「いえ、いいです」
俺は、気が抜けたのか呆然として車の中にいる。
若葉は、車のハンドルを握りながら前を見ていた。
前には、何台もの車がつながっている。完全に身動きが取れない。
「再葉と一年彼女に付き合ってくれて、ありがと」
「俺はあんな終わり方は、絶対に納得しない」
「忘れてはくれないよね」
「当たり前だ。それよりも……」
俺は呆然とした中でも、若葉をしっかり見ていた。
「あなたは……再葉がいなくなったのに、どうしてそうまで冷静でいられるのですか?」
「そう、そうね」
「あなたにとって、再葉とは何ですか?
母でも姉でもない、奇妙な関係だと。でも一つ屋根の下で暮らしていて……」
「再葉が、運命を望んで受け入れた結果よ」
「タワーの上から飛び降りるのが、そうなのかよ?」
「ええ」全く否定しない若葉。
その言葉に、俺は若葉を睨んだ。
「なんでそんなことを、再葉はしなければいけない。
再葉は、なんで死ななければいけない?
運命だというのか、そんなのはおかしいだろ!」
「彼女にとって運命は絶対なの。
ううん、違う。私も、美来も運命から逃れられない。私たちの住む世界で」
「なんだよ、何が違うんだよ?」
俺は否定をするが、若葉は冷静だ。
「あなたを守るために、彼女は運命を受け入れた」
「飛び降りることが?俺には、全然わからない」
「わからなくてもいいの。ねえ、ここなら人の目にはつかないから」
「若葉さん?」
そんな若葉がスーツの胸元を広げていた、
運転中にも関わらず、ボタンをはずす若葉。
俺を誘惑しようというのだろうか。
「ねえ、キス……しましょ」
「こんなところで、しかも再葉がいなくなったのに」
「再葉がいなくなったからよ。私は年下が好きなの」
「だけど……」そう俺が返事を返そうとすると、長い若葉の手が、俺の方に伸びてきた。
そのまま、俺の頭の後ろに回して、俺を抱き寄せた。
「若葉さんっ!」
「いいでしょ」
「これはどこかで……」
俺は、何かを思い出そうとした。
そうだ、修学旅行の帰りの日を思い出した。
そこには、再葉と香音がいた日だ。
「若葉さん、あなたは……」
「ええ、思い出しちゃった?あの時のキスを」
そういいながらも、強引に若葉が俺の顔を引き寄せた。
女ではあるものの、意外と腕力の強い若葉に俺は抵抗できない。
そのまま、吸い寄せられるように俺の顔が若葉の目の前にあった。
そのまま、若葉が唇を近づけていた。




