006
四十万 再葉の住所を、俺は知らない。
知らないから、初めて家に来た時に驚きがあった。
八階建ての鉄筋コンクリートの八階、そこに俺は通された。
俺の住んでいるマンションは五階、八階には行ったことがない。
まさか、再葉たちも俺と同じマンションだったとは。世間は狭いものだ。
時間は夕方から夜になるころ、俺は再葉の家の部屋に通された。
この部屋は、再葉専用の部屋で俺の部屋よりも少し広い。
窓からは景色は、眼下に見下ろす住宅街や駅や近くの公園なんかも見えた。
「これ、再葉の部屋か?」
「ええ、私の部屋」
そこにはテレビと、タンスとベッドが置かれた部屋。
普通の女子の部屋だけど、かわいらしいぬいぐるみとかそういうものはない。
色も、白と黒に統一されていて男の部屋と言われても違和感がない。
真ん中にある黒いテーブルを挟んで、俺と再葉が話をしていた。
「なんか、モノクロだな」
「私は黒が好きだから」
「本当に好きなんだな」
「私が目指すべき色」
再葉の意味が、よく分からない。だけど、黒が好きなのはよく伝わってきた。
「なんか、いろいろ不思議だよな。再葉は」
「そうですね、私もそう思います」
「一応、ヘンだという自覚はあるんだな」
個性的というか、根暗というか、再葉は不思議だ。
普段話す女子と違って、どこかミステリアスでもある。
「俺なんかを、この部屋に通していいのか?
一応、俺は男なわけだし。再葉は女だし」
「いいです、この家に初めて入れた男の人でもありますから。
それに、本郷君は私の彼氏です」
「だから違うって!」
何となく家庭環境は理解できた。
再葉の家は、母子家庭というところか。
若葉が母で、二人の娘ということか。
父親の話は、無理に聞かないでおこう。
「だけど、俺はあまり彼女を作るつもりはないけどな」
特に理由もないが、そもそも俺は恋愛に興味がなかった。
「私は、本郷君あなたに告白されたいの」
「だから、俺は……そういうつもりがない」
今のところ、俺は恋愛に興味がない。
高校に上がって二か月ほど、やりたいこともあってバイトもしている。
だから恋愛するよりも、今は学校生活だけで手いっぱいだ。
「俺はやりたいことがある」
「それでも、私はあなたに愛されたいの」
「その意味が、一番わからないな」
俺は、四十万 再葉の意図がわからない。
彼女が、どうしてこうまでして強引なのか。
なぜ、あまり面識のない俺が相手なのか。
そして、どうして俺が四十万に告白をしないといけないのか。
「私は、時間がないのだから」切実に、俺に訴えかけてきた再葉。
「なんでだ?」
「私に残された時間は、後一年だから」
それは、再葉がはっきりと俺に言ってきていた。
その言葉を聞いて、俺はしっかりと再葉を見ていた。




