059
四十万 若葉は、大人びて知的な女性だ。
髪は短く、できるОLの雰囲気を出していた。
交番の警察官に挨拶をすると、そのまま俺の前に現れた。
「若葉さん」
「今日は一年彼女、終焉の日でしょ」
「なんで、そんなに簡単なことが言える?」
「あなたの役目は、ここで終わりなの。だからお礼が言いたくて」
「お礼?ふざけるな!」俺は、若葉に怒っていた。
なぜ、再葉はタワーから飛び降りないといけない。
それは、再葉の意志なのか。
それとも、再葉が言う運命なのか。
その全てに俺は、納得できないでいた。
「大体、なぜ再葉は飛び降りた?」
「あなたを救うためよ」
「俺を?」
「そう。あなたはそこまで再葉を愛していないのに、なぜそこまで聞くの?」
若葉の言葉に、俺はじっと若葉を見返していた。
「愛していないか?」
「そう、あなたは再葉を愛していないでしょ」
「正直分からないんだ!再葉のことを、嫌いではないのはわかる。
でも、大好きになれなかった。
むしろ彼女の裏にある秘密に、俺は興味があった」
再葉は、俺に秘密にしていることが多かった。
だから、そこを知りたいという思いがあった。
それは、単なる好奇心なのだろうか。
それでも、俺は再葉の秘密を知らずに俺から消えていった。
「素直に言うのね」
「だけど、全く愛していないわけでもない。
俺は今まで、女とつき合うということをしたことがなかった。
純粋に再葉とデートをしていく中で、彼女の良さにいくつも気づいたんだ」
「そう、だから求めると?」
「会いたい」
俺は落胆した顔で、若葉の前で頭を下げた。
それは、俺の本心だ。嘘偽りない真実だ。
どうしても、再葉に会いたい。
今すぐ、俺の目の前で再葉を感じたい。
「でも、今は引いて……お願い」
「若葉さん、何か知っているんですか?」
「そのことを、車の中で話すから」
そういいながら、若葉が俺を車に導いていた。
交番にいる警察官に、深々と頭を下げながら。




