056
一年は、あっという間だ。
この日は平日だけど、学校をさぼった。
デートで学校をさぼったのは二回目だ。俺は再葉と新幹線の中にいた。
そして、新幹線車内の電光掲示板は六月二日だ。
「しかし、この日は新幹線で東京とは」
「この日は、とても大事な日ですから」
「ああ、俺は来てほしくなかったけどな」
再葉を目の前に、俺は口惜しそうに再葉を見ていた。
それは一年彼女、最後の日。
「私もです……」
「なら一年彼女じゃやめようぜ、俺と再葉の関係はこれからも……」
「続きません」
再葉は、そこだけは強く否定した。
俺の言葉は、完全に遮っていた。
「でも、再葉と一年間いろいろあったよな」
「はい、どれも楽しかったです。公園でのデート、浜名湖でのデート。
体育祭に、自宅デート、クリスマスとバレンタイン。
そのどれもが、私の思い出です」
「そうだな、一人の女子と長く向き合うのは初めてだったから」
「健斗はそれでもほかの女の子と話すけど」
そういいながら、少し拗ねている再葉。
すねた顔でさえも、再葉はかわいかった。そして愛おしい。
恋愛を、俺は最近ようやく理解した。
何気ない相手の感情、仕草を愛せるようになるのだろう。
再葉との他愛ない会話でさえ、俺は楽しく心地よい時間だった。
「まあ、仲のいい女子だよ。ただの友達。
再葉以外では、そんな感情にならないし」
「そんな感情って?」
「まあ、その好きというか……」
「健斗っ!」ちょっと照れている再葉。
だけど、俺はやっぱり気になることがあった。
「どうしても聞きたいことがってな」
「ええ、健斗」
「聞いてくれるか?」
「わかっている」
俺の言おうとしていることが、再葉もわかっている。
この質問は、初めから疑問に思っていたこと。
それは、どうしても聞かなければいけないことだ。
「再葉。一年彼女が終わったら、俺たちはどうなるんだ?」
それは、この日の後のことだ。
俺は怖くて聞けなかったこの質問を、俺はあえて口にしていた。




