055
恵理那の言う通り、再葉は観覧車乗り場にいた。
夕方から夜、閉園時間が近づく中で俺は再葉を見つけた。
再葉が目の間に出てきた瞬間、恵理那はすでに俺から静かに離れていく。
まるで、人影に隠れるかのように恵理那はいなくなっていた。
「再葉っ!」
「健斗、私は……」
「ごめんな、あの時は」
「ううん、いいの。悪いのは私だから」
「コースターは、結局乗れなかったな」
そんな再葉が見ているのは、観覧車だ。
大きな観覧車が、きれいにライトアップされていた。
当然のことながら、行列も続いていた。
「乗るか?最後に」
「うん」俺と再葉は、迷うことなく行列に並んでいた。
その行列は、ジェットコースターよりずっと短い。
ただ、並んでいるのは男女ばかりだ。
男や女一人で並ぶと、浮いてしまうほどだ。
「観覧車は、運命になかったものですね」
メモをちらりと見て、俺に答えていた。
「ああ、たまにはそういう外れたのもいいだろ」
「そうですね」笑っている姿が、かわいく見えた再葉。
なんだか再葉が、少しほどけて楽にしているように見えた。
「今日のデート、あまり一緒に入れなかったけど楽しかったか?」
「うん」
「そうか、それはよかった。俺はもっと遊びたかったな」
「私もです、健斗」
「なんだろうな、もう終わっちまうんだよな。一年彼女」
「はい。六月になったら私は、あなたと別れます」
「本当にそうなのか?」
俺は再葉に、自分の感情を告げていた。
いつの間にか、俺は再葉が気になって再葉中心の生活に変わっていた。
だからこそ、再葉との時間を大切にしたい。
もっと、再葉と一緒にいたいのかもしれない。最近はそう思えた。
「とりあえず手を、つなぐか」
「はい」俺は再葉と手をつないだ。
周りに並ぶカップルと同じように、俺は再葉と手をつないでいた。
「私、高いところが好きなのです」
「なんでだ?」
「高いところから見る景色は、とてもきれいですから」
「まあ、な」
「だから、最後のデートの場所は決めています」
「え?」
「日本で一番高い場所に」
そういいながら、再葉は二枚のチケットを見せてきた。
そのチケットを見せた再葉は、真剣な顔で俺を見ていた。




