053
俺は、再葉の運命を理解できない。
いつも大事なことになると、彼女は「運命」という言葉で逃げてしまう。
その言葉は、再葉の根幹にあるような言葉。
彼女を支えているその言葉の意味を、俺は知りたかった。
「その運命は、誰が決めている?」
「神です」
「嘘だ、そのメモはなんだ?」俺は再葉のカバンを指さす。
肩にかけたバッグに、再葉がメモを忍ばせているのを俺は知っている。
「これは……その」
「そこに、メモがあるのはわかる。
それが再葉に、命令を出しているようで……メモに従いすぎているだろ」
「私は傀儡じゃない!私は感情があって……その」
再葉が、困った顔で俺を見ていた。
それは救いを求めるような、そんな顔で。
「そういうときだけ、俺にすがるのか?」
「ごめんなさい、健斗」
「いつも俺にいくつも隠しごとをしていて、俺は心配なんだよ。
再葉が、何か危険なことに巻き込まれていないか。
初めは、そこまで気にならなかったけど。今は気になって仕方がない。
教えてくれよ、再葉との感情を共有したいんだ」
「健斗が?無理」
「なぜだよ?」
「健斗は、どうしても巻き込みたくない」
なんだろう、その言葉どこかで聞いたような。
だけど、その言葉をどこで聞いたのか俺は思い出せない。
「ごめんなさい」
一言、言い残して再葉は俺から離れていった。
行列を抜けて、そのままどこかに走っていった。




