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初詣から一か月以上が過ぎたこの日、俺はいつも通り家のリビングにいた。
朝の通学準備の時間は、とにかく忙しい。
俺も、制服に着替えて用意された朝食を食べにテーブルに向かう。
だけど、そこには先客がいた。
「遅いぞ、健斗」そこにいたのは、小さな体の女の子。
「なんで、美来がここにいるんだ?」
「昨日、若葉が来ただろ。再葉は夜に出かけるって」
「ああ、そうだったな」
最近は、我が家も若葉さんの託児所代わりになっているのだろうか。
まあ、若葉さんの家は最上階でそちらの方がよほど安全だと思うのだが。
「それよりも、お前は女子と仲がいいのだろ」
「ま、まあ」
「再葉が泣いていたぞ」
「再葉が?まあ、俺が女子と仲がいいからな」
「彼女がいるのだから、あまりほかの女子と親しくしないでよね」
「ああ、なんか悪い」
五歳児に怒られる、高校一年の俺。
ただ何となく、美来のたたずまいが五歳児ではない。
落ち着いているし、精神年齢は俺よりも上のような気さえした。
そんな中でも、俺は朝食の食パンを食べていた。
「まあ、今日はチョコレートの日だからな」
「チョコレートの日?ああ、バレンタインか。
今日の再葉は、学校に来られるのか?」
「来るだろう、運命通りならば」
「運命ねぇ」
いつも運命という言葉に、再葉は縛られている気がする。
再葉はメモを持っていて、デートごとに運命という。
行く場所も、行く時間も運命ですべて片付いている。
「健斗は、去年いくつもらった?」
「去年か?受験生だったからな、三つか」
「ほうほう、プレーボーイも少ないな」
「だからプレーボーイじゃないって。
この三つだって、全員姉からだし。『受験がんばれ』のメッセージ付きで」
「そうか、つまらん」
勝手につまらなそうにする美来。
随分と気楽な立場だな、美来は。
「それでも、今年はもらえる数は増えそうだろ。
今回は、いくつを予測している?」
「さあな、義理ばっかじゃない。彼女を公認しているわけだし」
「そうか、再葉への気持ちはどうだ?」
「再葉への気持ち?」
「そう、再葉をどう思う?感情は変わったか?」
美来の言葉に、俺は首をひねっていた。




