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再葉には、否定的な意見が多い。
特に響は、再葉をいじめていた経緯がある。
誰かがいじめると、周りは助長する傾向がある。
中学の頃は、まさにそうだった。
環境が変わって、高校に進学した再葉。
それでも再葉は、いつも香音と二人きりだ。
その香音だって、クラスで一番力のある恵理那に喧嘩を売る始末だ。
だからこそ、俺は気になっていたのだ。周りの、俺の彼女に対する反応を。
「シジーは悪い子じゃないと思う」
「そうか」
「いつも一人でいるから、暗いイメージがあるけど」
「まあ、それは否定しない」
同じクラスに香音はいない。
再葉にとって心許せる数少ない、いや唯一の人間。
「ありがとな、そう言ってくれて」
「うん、ボクは悪い人はいないともう」
「相変わらずピュアだな」
「だって、悪い人は生まれてこないから」
「世の中には犯罪や戦争、いろんな悪いことがあるのに?」
「それでも、生まれたての赤ん坊はそうじゃないから」
飛鳥は、どこまでもまっすぐでピュアだ。
飛鳥はわかる、隠し事がない。素直で、思ったことを正直に言うのは飛鳥だ。
高校からの付き合いだけど、それはよく伝わってきた。
「まあ、そうなんだけどな」
「这里是神社吗?」
そんな中、目が細い一人の女が社務所にやってきた。
その女は、少しオーラが違う。なぜか黒いチャイナ服を着ていた。
「中国の人ですか?」対応する飛鳥が、困った顔を見せた。
「日本語、大丈夫よ」
「ああ、それなら」
「この神社に彤弓はないの?」
「え?」
俺は一瞬、彤弓という単語が出てきて驚いた顔になった。
だけど、俺の顔にその中国語の女は気づいていない。
「なに?トウキュウ?デパートかなにか?」
「私たちの家から持ち出したもの、泥棒」
「さあ、見ませんが。それより破魔矢を買いませんか?」
飛鳥が、笑顔で接客をしていた。
怖くなった俺はその切れ目で、ショートボブの中国語の女から視線をそらしていた。




