048
年が明けた。元旦のこの日、俺は少し遠出をしていた。
電車に乗って、地元掛川から静岡市内まで来ていた。
車内は、着物姿の女性もちらほら見かける。電車に乗ってまでついたのが、神社だ。
赤い鳥居をくぐって、多くの参拝者がいる神社の本殿に向かう。
(本当にここなのか?)
それは静岡市内にある大きな神社。
俺はスマホ片手に周囲をぐるりと見まわすと、社務所の方に向かう。
そこで、一人の巫女が俺に手を振っていた。
「やっほー、ケンタ」
「元気だな、あけおめ飛鳥」
「あけおめ、ケンタ」
そこにいたのは少し日に焼けた巫女服の女子。
短い髪の俺のクラスメイトは、巫女服でも元気いっぱいだ。
そして、なぜか俺のことを「ケンタ」と呼ぶ。
「飛鳥はバイトか?」
「実家の手伝い、この日は忙しいからね」
「元旦だしな」
「ねえねえ、ボクのこの服似合う?」
飛鳥が、俺に巫女服をアピールしてきた。
短い髪で健康的に日に焼けた肌の飛鳥。巫女服を、腕まくっているところが飛鳥らしい。
「まあ、似合うんじゃないか?馬子にもなんとかいっていうか」
「そう、よかった。ボク、心配したんだよ」
「接客時もボクっていうのか?」
「いや、言わない」
そんな社務所は、人がまばらだ。参拝から帰る人が、今の時間は多いようだ。
「まあ、いいけどな。それよりありがとな。この前の稽古」
「うん、まさかケンタが弓道に目覚めるとか」
「目覚めたわけじゃないが、まあ興味があったので」
「そう、それでもいいよ」
飛鳥は、陸上部だけどほかの部活も掛け持っている。
実家が神社ということで、剣道や弓道、さらには薙刀も幼いころから嗜むスポーツ女子だ。
俺が彤弓を教わったのも、飛鳥だから。
「ねえ、それより破魔矢かった?」
「破魔矢?これか」
そこには、シンプルに赤いひもで飾り付けられた破魔矢が置いてあった。
値段は、普通サイズだと千円か。高いな。
「この破魔矢って、邪気を払う意味があるんだって」
「邪気ねぇ」
「一年の初めに破魔矢を買って、邪気を払う。
この矢は、人に向けるものではなく邪気に向けられる矢だよ」
「さすがは巫女」
「まあね」
その言葉を聞いて、再葉のことを思い出す。
再葉の身に起こるあの発作も、邪気なのだろうか。
だとすると再葉は、何かの呪いがかけられているのだろうか。
それは、俺にもわからない。情報は全部抑えられているし、開示されない。
「まあ、考えても仕方ないか」
「何が?」
「いや、こっちのこと」
「そう、シジーのことかと思ったよ」
意外と鋭いな、飛鳥は。
飛鳥の言葉に、俺は表情に出して驚いていた。
「やっぱりね、シジーはかわいいから」
「飛鳥はどう思う?俺と再葉の関係」
「そうだね」
そういいながら、少し飛鳥がもったいぶった顔を見せていた。
俺は、じらす飛鳥の言葉を少し待っていた。




