045
季節は、進み冬になっていた。
寒さが身に染みるこの季節、俺が住んでいる掛川にはあまり雪が降らない。
今日のデートは、俺の家だ。
最も、再葉のいるマンションと同じでフロアだけが違う。
それにこのデートは、俺が初めてのことを試す日でもある。
「今日もデートですね」
「ああ、そうだな」
俺の部屋にいる、彼女になった再葉。
再葉との会話も、今は彼女らしい。お互いのことを理解してきている証拠だ。
だけど、まだ俺は彼女の秘密を知らないでいた。
俺が再葉の秘密に触れられるのは、いつになるのだろうか。
それも、今日がその秘密を知る第一歩なのかもしれない。
「何もないんですか?」
そこはシンプルで、男の部屋があった。
ベッドと机、ポスターは車だ。
ごく普通の男子高校生の部屋だ、好きなアイドルとかもいない。
「なんか、男の部屋って感じですね」
「ああ、そうだな。大体、部屋ではDVDを見るぐらいかな」
「DVD?」俺の部屋にはテレビがある。
「そうだよ、エロいのじゃないぞ」
「ふーん、どうだか?」
はっきり言って、再葉は全然信用していない。
そういう会話も、なんだか本物の彼女っぽいな。
「でも、いいの?夜遅いと」
「大丈夫、理解している。俺も再葉のことが知りたいんだ」
「ねえ、健斗は私の真実を知って、どうするの?」
「そうだな、当然だろ」
俺は再葉を純粋に知りたい。
この俺と再葉の関係は、一年間限定だ。
それでも、俺は付き合うからには相手をちゃんと理解したい。
お互いを理解しないと、相手にも失礼だ。
それに俺も最近は、再葉のことを気にかけるようになっていた。
純粋にかわいいし、女性としては魅力的だ。
今まで女友達は何人もいるけど、再葉はそのどれとも違う雰囲気がある。
なんというか、一生懸命生きているそんな気がしていた。
「ありがと、健斗」
「当たり前だろ、俺は彼氏なんだぜ」
そういう言葉も、今は全く抵抗がない。
「それに今日は……」
「ううっ……」そんな再葉は胸を押さえて、苦しみだしていた。
俺は、そんな再葉の姿を知っている。
再葉の目が、赤く光っているのが見えた。
だけど、俺は知っていた。
「再葉、発作か?」
「ううっ、私……」
「待っていろ、今!」俺は部屋の壁に掛けてある弓を取り出した。
それは、かつて若葉が持っていた大きな弓。彤弓といわれた弓だ。
矢のない弓を、俺は再葉に向けて構えていた。
(こうやって、弓の弦を引くよな。あとは心を落ち着かせて)
俺は矢のない弓を、再葉に向けて引く。
構えただけで、矢が現れた。その矢を、俺は放つ。
放たれた矢が、一直線上に再葉の胸を貫いた。




