042
何が起こったのか俺は理解できなかった。
俺は一瞬にして移動して、再葉がそばにいる。
俺のそばにいたはずの響が、少し離れて倒れていた。
「そうですか、そうですか。彼の方が大事でしたか」
響のそばには、謎の男。
見た目は中年の男だけど、明らかに様子がおかしい。
「松原さんは?」
「人質のつもりでしたが、残念ながら倒してしまいました」
「こちらの社会に危害を加えることは……許されない」
「あなたが、素直に帰らないのがいけないのです」
「私は、絶対に帰らない!」
再葉と男の会話は平行線だ。
全くかみ合わない会話に、俺はついていけない。
それにしても、今の再葉は強気だ。
今までの弱弱しい再葉の姿は、どこにもない。
いや、これが本当の再葉なのかもしれない。
「では、彼を……」
そういいながら近くにあったベンチに、男が近づく。
ベンチを強引に力で、引っ張り上げた。
こいつ、なんて怪力なんだ。
太っているわけではないのに、重そうなベンチを片手で軽々と持ち上げた。
「それはさせない」俺の前に再葉が立ちふさがる。
「守りながら、ということですか?」
ベンチを投げるが、俺の体が再び浮く。
再葉が抱き着いたまま、俺を動かした。
俺と再葉がいた場所は、ベンチが飛んできた。そのまま粉々に砕けた。
俺はそれと同時に、震えだしていた。
「あなたはこの社会に、望まれていない。戻るべきです」
「それでも……私はこの社会で生きる」
「それはできない」
再び近くのベンチに近づいて、持ち上げた。
軽々と持ち上げて、俺と再葉を見ている。
俺を抱きかかえた再葉は、男から離れるように睨んでいた。
「あなたは、完成した化け物だから」
「それは違います」
そんな時、公園の入り口の方から声が聞こえた。
それは、白いワンピース姿のツインテールの少女だった。




