041
俺と響は、何が起こったのか分からなかった。
それは、再葉が突然いなくなって上に飛び上がっていた。
飛び上がった再葉の上から、暗闇に紛れて飛び降りてくる影。
ドンと強い音がしたかと思うと、すぐに再葉と上空から強い風が巻き起こった。
「何が起きた?」
「わからない」そんな俺と響の前に、強い風が巻き起こる。
強い風と、激しいぶつかり音だけが闇の中に聞こえる。
そんな現象が数秒間続いた後、地面に降りてきた二つの影。
一つは再葉だ。制服姿で、少し呼吸を乱していた。
その再葉と向き合うように、立っているのはおっさんだ。
茶色のダウンベストに長ズボン。
老け顔に、口にひげを蓄えていた。
顔には、少ししわのようなものもある。だが、なんといっても少し顔が赤い。
照れているというか、何か酔っているかのような顔だ。
「よく気がつきました、再葉」
「あなたですか」
「ええ、姫。お戻りください」
姫、何のことだ。あの男は、再葉の何を知っているのだろうか。
「私は戻らない」
「そんなことを言わずに、戻ってくださいよ。
両親も、あなたのことを心配されていますよ」
「私の親は若葉だけ」
「それは、違いますぞ」
老け顔の男は、首を横に振った。
再葉とこの男は、いったい何の関係なのだろうか。
「あなたの過去は、変わらない。
親は、死ぬまで永遠に変わることはないのです」
「それでも、あなたたちは私を利用しようとした」
「利用されるのは、あなたにそれなりの価値があるからです」
なんだか、男と再葉が何か言い合っているな。
そんな中でも、口を挟むのは響だ。
「ちょっと、あなたたち!何をやっているの?」
「おや、あなたは……」
「再葉、どういうことか説明しなさい」
「松原さん……逃げて」
「おや、お友達ですか。これはこれは……」
男がすぐに気づいて、響の方に振り返って深々と頭を下げる。
だけど、再葉の顔はとても険しい。
「こちらの人間は、関わらない方が身のためですぞ」
「ダメっ!」叫ぶ再葉。だが、すぐさま男は消えた。
「え?」響はいきなり消えて、驚いた。
もちろん、俺も驚いた。だけどそれだけではない。
次の瞬間、俺の体が浮いていた。
「何が……」その俺の腰を、誰かがつかんでいるのが見えた。
髪が長い、再葉だ。
後ろに飛んだかと思うと、そのまま足が次に着地したとき俺は再葉に抱きかかえられていた。
そして、俺の少し離れたところでは響が倒れていた。




