040
修学旅行でも、俺は一緒になっていた女子だ。
それは、響だ。同じバイト先で、俺がよく知っている女。
寒いのか、コートを着ている響はやはり再葉を見ていた。
「ケン……なんで?」
「それは俺のセリフだよ。俺たちを覗いていたのか?」
「そうよ、ケンが心配だから」
響は、困った顔で俺に詰め寄った。
それでも、俺は首を横に振る。
「再葉は、何もしていない!」
「嘘よ!」響が否定する。そのまま、響が再葉の元を詰め寄ってきた。
その響に対して、再葉は冷静な顔を見せていた。
「あなたは変わらないですね」
「ええ、あなたもよ。再葉」
腕を組んで睨む響。響ははっきり再葉が嫌いなようだ。
険しい顔で、背の高い響が再葉を見下ろす。
「どうして、あなたも同じ学校にいるの?
なんで、あたしの前に現れるの?よりにもよってケンの前に」
「健斗は……私の彼氏」
そういった瞬間に、響が再葉の制服の襟をつかむ。
「そういうところが、一番ムカつくのよ。
あなたの空気を読まないそういうところが、大嫌いっ!」
「私は……」
「あなたは、やっぱりこんなところにいちゃいけないのよ!」
「健斗が好きです」
怒る響きの前で、再葉ははっきり言い放った。
「再葉……あんた」
「私の気持ちは変わらない」
「こいつ……」襟をつかんだまま、手を挙げる響。
「おい、やめないか?」俺は割って入ろうとする。
「やめるつもりはないわよ」
「松原さん、手を離してくれませんか?」
そんな響に再葉が、言い返していた。
それを聞いた瞬間、響が激高する。顔が赤くなって手を振り下ろした。
そのまま、響は再葉の顔を殴った。バチンという乾いた音が、薄暗い公園に響く。
「あんたはね……そういうところが」
「嫉妬ですか?」
「そうじゃない、そうじゃないけど……」
「だけど、手を離さないとここで全員死ぬ」
「はあ?何を……」
再葉の変な言葉に、響が眉をひそめた。
だけど、俺は何かを感じた。それは悪寒のようなピリついた空気。
それを感じたのは、俺たちの真上だ。上から人が一人飛び降りてきた。
「上?」
「そう」だけど、次の瞬間響に襟元が捕まれた再葉の姿がなかった。
目にも止まらない速さで、再葉は飛び上がっていた。




