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一年彼女  作者: 葉月 優奈
三話:一年彼女を狙う者
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なぜ、こんなことになったのだろうか。

山の上で、眺望は俺と恵理那だけだ。

昼間だけど、人の数も少ない。

平日なので、ムードがいい。静かな空間に俺と恵理那の二人っきりのようだ。


「恵理那、何を?」

「私は本気よ。あなたを愛してしまったから」

「マジか」

俺の前の恵理那は、顔が赤い。

その顔を見て、俺は頭をかいていた。


「俺の彼女は、今は再葉だ」

「わかっている、それでもずっと我慢していたの。

本郷君は優しくて、頼りになって……本当は……男性恐怖症なの」

「男性恐怖症?」

「そう、私は男性が苦手なの。

近づかれても、触れられてもダメ……なの」

「そうなのか、全然そんな風には見えないけどな」

「本郷君だけは別」

恵理那ははっきりと、俺に言い放った。


「私には二人の兄がいたのよ。

その二人の兄は、私と年が離れていて……よくいじめられていました」

「いじめ?」ここでもこんなワードを聞くとは思わなかった。

それでも、恵理那の顔は深刻だ。


「ええ、私は二人の兄にいじめられたの。

殴る、蹴る、また殴る……その繰り返し。

家に帰るのがとても怖くて、嫌だった」

「そうか、それで男性恐怖症か」

「はい、男性は怖かった。

小学校から、中学も男性が苦手で……

それでも私は、何となく男性苦手を克服しようとしたけど……ようやく見つけたの」

「それが俺なのか?」

「そう、本郷君。私にとって、あなたが初めてのちゃんと話せる男性だったから。

私はあなたに運命を感じたのよ」

「そうだったのか」

確かに、恵理那は美人だ。

女子の中でも特にウケのいい女だけど、男性と話すところは見たことがない。

そのまま、恵理那が俺に迫ってくる。


「私にはあなたしかいないの、付き合って」

「それでも俺には再葉がいる、付き合うつもりはない」

「四十万さんよりも、私はあなたを幸せにできるわ」

恵理那が、大きな胸をアピールしてきた。

確かに、恵理那は胸が大きいしセクシーだ。

頭もよく、運動神経も悪くない。何でもこなせるクラス委員長だ。

全てにおいて再葉を上回っているだろう。


「だけど……」

「私は、あなたでなければダメ。

そうでないと、ほかの男性は愛せない」

「恵理那」

恵理那は本気だ。

長い髪で、しっかりと俺を見ている。

俺は困った顔を見せていると、次の瞬間パシャリと音が聞こえた。


「え?」

「あ?」

俺と恵理那が、ほぼ同じタイミングで声を上げた。


そこにいたのは一人の女子生徒だ。

カメラを首にぶら下げていて、髪の短い女子が俺と恵理那を撮っていた。


「あなたは?」

「香音、どうしてここに?」

そこにいたのは、馬走(まばせ) 香音だ。

ミニツインテールで制服を着た、幼い顔の女子生徒。

見た目はおとなしい小学生に見えないこともない。

物静かな彼女は、俺と恵理那のツーショット写真を何枚も撮っている。


「ちょっとやめて、馬走さん!」

恵理那が、拒むも香音はやめない。

カメラを構えて、何枚も写真を撮っていた。


「クラス委員長が、公認カップルの邪魔をしていいのですか?」

「公認って?」

「委員長は、本郷君の彼女を知っていますよね?」

カメラを構えたまま、写真を撮り続ける香音。

恵理那は、それを聞いて眉をひそめた。顔がまだ赤いまま。


「私には、本郷君が……」

「この写真、クラスにばらまくけどいい?」

「それは、ダメっ!」恵理那は、すぐさま香音に手を伸ばす。

だけど、香音は華麗に恵理那の手をかいくぐった。


「あなたの告白を取り消しなさい、そうでなければばらまく」

それは香音の脅しだった。俺は二人のやり取りを少し遠くで見ていた。

だけど、まもなくして恵理那が肩を落として元気のない顔を俺に向けてきた。


「ごめんね、本郷君。忘れて……」

次の瞬間、恵理那が涙を流して俺から走って離れていった。

俺は、それを呆然と見守るしかできなかった。



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