032
あれから一時間、時間は夜十時から十一時になろうとする時間だ。
俺と再葉は風呂に入り、部屋に戻っていた。
俺はいつもジャージで過ごす。中学のジャージで、黒っぽい色だ
俺の前には、再葉が着替えていた。
ノースリーブの水色キャミソール、だけど胸の小ささがより目立っていた。
華奢で、子供っぽい再葉が少し色っぽく見せていた。
だけど、何よりも右肩や足の包帯や見えた。
間が持たないのか、俺は漫画を再葉に勧めていた。
「こういうのが好きなのね」
「意外と少女漫画も好きなのね」
「姉の影響だ」
俺の本棚には、雑誌も置かれている。
そこには少年誌もあるが、少女漫画も置かれていた。
ほとんどが姉のお古だけど、なぜか俺も読んでいた。
「別にすごい好きというわけじゃないけど、少女漫画って子供向けの割には設定が複雑というか。
まあ、たまに男の俺が読んでも、すごいなって思わせるところがあるし。
再葉が読んでいるのは、恋愛ものだぞ」
「うん、これ……すごいね。参考になる」
「再葉は、あんまり漫画を読まないのか?」
「読まない……かな」
再葉は、少し考えて答えた。
「恋愛とか、そういうのは少女漫画というのはかなり参考になる。
まあ、漫画のような恋愛はリアルにありえないものもあるけど」
「それでも、いい恋愛がしたい。私は健斗と」
「そうだな、せっかく彼氏になったんだしな」
あれ、俺は何を言っているんだろう。
目の前で漫画を読んでいる再葉に、俺は興味があるのか。
謎が多く、秘密を俺にいくつも隠している再葉。
だけど、俺はそんな再葉に惹かれているのか。
俺は再葉のことが、最近気になって仕方ない。
「ううっ……」漫画を読んでいると、再葉は小刻みに体を震わせているのが分かった。
「どうした、再葉?」
「あの……健斗」
「何かあったか?」
「私……苦しい」
再葉は、テーブルに置いていた漫画を、強い力で払った。
そのまま、しゃがみこんで苦しんでいるようにも見えた。
「再葉っ!」駆け寄った俺、再葉の傍らに近づく。
「近寄らないで!」叫んだ再葉。彼女の目は、白から赤くなっていく。
だけど、俺は突然苦しむ再葉を心配していた。
「目が赤いぞ」
「こないで!あなたを……」
「再葉?」俺が声をかけると、赤い目の再葉がゆっくり立ち上がった。
そのまま俺の方を見るなり、両手を伸ばしていた。
俺の両肩を、強い力で握ってくる。
「い、痛いっ!」肩の骨が折れそうだ。
再葉が力を込めて、俺の両肩を握ってくる。
その目は、とても赤くて俺をはっきりと睨んでいた。
そんな再葉の顔を見て、俺は初めての感情を覚えた。
「こ、怖い……」それは再葉に対して、初めての恐怖だった。




