003
翌日、俺は傘を持って行っていた場所がある。
そこは、俺がたまに場所でもあった。
電車を降りて、少し歩くと国道沿いに、その店はあった。
「ゲーセンか」
それはゲーセンだ。
国道沿いにあるゲーセンは平日昼間で、放課後帰りの学生が多くいた。
とはいっても女子が、このゲーセンは多い。
プリクラが、多いのが店内でよく目立つ。四十万から借りた傘を持って、俺は店内を歩いていた。
(本当にここでいいのか?香音)
翌朝、四十万は同じ教室にいた。
だけど、それでも四十万の様子は少しおかしい。
まるで俺を避けているようだ。
そんな四十万の代わりに話してきたのが、彼女の親友の香音という女子だ。
元々、俺は香音とは知り合いだった。今はクラスが違うけど。
四十万の窓口になった香音は、俺に傘を持ってこのゲーセンに来るように言っていた。
(ゲーセンにきて、何をしようというんだ?)
四十万の考えなのか、香音の考えなのかよくわからない。
とにかく呼び出された俺は、仕方なくここに来ていた。
(それにしても、どこにいるんだ?)
四十万の姿を探すが、見当たらない。
学校から帰りの電車でも、再葉の姿は確認できなかった。
四十万の家は、俺と同じ掛川だ。
学校までの道のりは、ここからだと電車しかない。
放課後、俺が乗った電車には四十万の姿がなかった。
(プリクラ……じゃないとすると、女子だからビデオゲームでもないし……
あとは音ゲーのところは……あれか)
そんな中、音ゲーのエリアでひときわギャラリーが沸いていた。
(あれが、四十万だったり……そんなわけないよな)
ギャラリーの中をのぞくと、一つの筐体の前でゲームをしている二人組がいた。
それは、音楽ゲーム。キーを叩いて、音楽を出すゲームだ。
かつては男がやることが多いゲームだけど、今は人気の曲も使われていて女にも人気だ。
一人は、小さな女の子。
小学生というか、幼稚園児というかとても小さい女の子。
筐体の前に高い足場に乗って、小さな手足を伸ばしてキーボードをたたく。
機敏な動きで、ミスがない。ミニツインテールを、なびかせながら演奏していた。
そして、女の子の隣には髪の長い少女。
それは四十万だった。女の子の隣で、やはり音楽ゲームをしていた。
四十万の手の動きも、なかなか早い。
隣の女の子よりも二回りも大きな四十万は、しっかりと画面を見ていた。
「おおっ、170……180コンボかよ」
「マジか、あんなにうまいのかよ」
ギャラリーが、すっかり二人組の演奏に見入っていた。
俺は、音楽ゲームはあまりやらないがすごいのがわかる。
画面の中にある音楽バーが、いくつも見えた。
それが高速で流れてきて、的確にキーボードをたたく二人の女。
それはまさに音楽だ、完成された音楽は激しいファンキーなロックとなって響く。
やがて、演奏が終えると「おおっ、またクリアした」と歓声が上がる。
ギャラリーは、二人の完璧な演奏を讃えていた。
讃えられる女の子は、四十万に手を引っ張られてゆっくりと降りる。
女の子は、得意げな顔で声援にこたえていた。
そんなとき、ギャラリーの中から俺の顔を見つけた四十万が近づいてきた。
「来てくれたのね、本郷君」
「ああ、傘……渡しに……」
「ここでは話せないから、出ましょ」
「なんでだ?俺は傘を渡すために」
「私は、あなたに話さないといけないことがあるの」
それは、四十万のこわばった顔だ。だけど顔全体が少し赤い。
「四十万?」
「お願い」
うつむいた四十万が、俺をギャラリーから引き離すように袖を引っ張った。
そのまま俺の腕をつかむ。
その力は、女子にしては強く俺は簡単に腕を引っ張られていった。




