028
体育祭は、三時半に終了した。
終わればすぐに、片付けが始まる。
テントを畳む作業を、俺は黙々と続けていた。
片付けは、クラスの人間も手伝ってくれる。俺は主に指揮をしていればいい。
「そっち頼むな、田中。えりちょー一人じゃ大変だから」
男子にも、普通に俺は指示を出す。
周りを見回しながら、クラスメイトに指示を出していく。
「あの……本郷君」
「再葉か、もう帰っていいぞ」
俺は、そんな中でも再葉を休ませていた。
足や腕に包帯のある再葉に、変な仕事を与えられない。俺なりの配慮だ。
「でも……私」
「俺に、そのけがを隠していただろ」
「……ごめんなさい」
再葉は元気なく謝った。
不安そうな顔で、俺の方を見上げていた。
「謝らなくていい、それに、こっちの仕事は少ないし」
周りを見ながら、俺はそばに来ていた再葉。
「でも……私は動けますし」
「帰れよ」俺は強く言い放った。
それを聞いて、再葉は深刻な顔に変わっていた。
「なんでそんな声で言うの?」
「あ、再葉……そういう意味じゃなくて」
「私は……みんなと」
「ああ、ごめん。怒ってしまって」
俺は、すぐに謝ったが再葉の不安な顔が変わらない。
そんな再葉に、俺は肩に手を伸ばした。
周りを見ながら、俺は再葉を抱き寄せる。
そんなものを働く周りが見せられて、ザワザワとしていた。
「俺は心配なんだよ。あのときのいじめか?新しいいじめか」
「違います」
「じゃあ、なんだ?」
「私がいけないんです」
「あれ、シジー」そんな呼び方で出てきたのは、走って俺と再葉に近づいてきた。
足の速さから言って、猛スピードでやってきたのは飛鳥だ。
「飛鳥、なんだよシジーって?」
「四十万 再葉だよね?ケンタの彼女さん」
「え、ええ」
速く走って、息切れもしない飛鳥が再葉の方に顔をのぞかせた。
驚いた再葉は、飛鳥が人懐っこい犬のように再葉を見ていた。
じろじろ見ていた飛鳥が、すぐに体操服の再葉に気づいた。
「でも、すごいケガだよね」
「うん、やっ!」すぐに飛鳥が再葉の左腕や足を触ってきた。
「筋肉が痛がっている」
「え、あの……用宗さん」
再葉も飛鳥のことを知っているようだ、まあクラスメイトだし。有名人だから。
それでも、再葉の体をベタベタと障ってくる飛鳥。
飛鳥がやっていること、男がやれば完全にセクハラだよな。
ほほを赤くして、再葉が困っている顔を見せていた。
「ちょ、ちょっとやめてください」
「うーん、なんか筋肉が死んでいるよね」
「え?そうですか?」
「うん、ボクはわかるんだ。一応陸上をやっているから、その筋肉がどうなのかわかるよ」
どういう意味かよくわからないが、用宗は何かを感じたようだ。
「このケガ、普通じゃないよね」
「ああっ!」飛鳥が、再葉の包帯の巻かれた右肩をつかむ。
両目をつぶって、再葉が飛鳥の手を左手で払った。
「じゃあ、そのケガはなんなんだ?」
俺は、再葉の前に立って聞き返していた。




