020
この休憩所は二人しかいない。
俺と響は、同じバイトであると同時に同じ高校だ。
小学校も、中学校も同じで幼なじみ。
俺は響とは、特に仲がいい女子だ。
「女子の情報網は早いな。俺のクラスじゃないだろ」
「隣のクラスだから変わらないでしょ」
「まあ、そうか」
「本当に、ケンの彼女は四十万 再葉なの?」
「そうだよ、中学一緒だったし。響も」
「なんで、よりによって再葉なの?」
持っていたポテトを、指で握りつぶす響。
その目は、試合で見せるようなギラついたつり目だ。
エース投手で、とても気が強く物おじしない性格なのも俺はわかっていた。
右手でハンバーガーを持ったまま、俺は響の方にしっかり向いていた。
「まあ、いろいろあって……再葉には俺が告白した」
「ケンは、再葉と話をしていないでしょ!
マンションが一緒ってだけで、なんで彼氏になるのよ?」
「あれ、知っていたのか、響」
「この辺りは、大きなマンションは一つしかないでしょ。
それにあの子は、中学二年の時に転校してきたのよ」
「そうかそうか、響は同じクラスだったのか?」
「やめて!」その顔は、響の怒りのようなものを感じられた。
威嚇するようなその目に、俺は軽く恐怖を感じていた。
「あの子と関わると、ロクなことがないわ」
「どういうことだ?」
「彼女に近づくと不幸になる」響は、低いトーンで話してきた。
怖い話を朗読するかのような、恐怖をあおるしゃべり方で話していた。
「不幸?」オウム返しで、聞き返した。
「彼女に絡むと、みんな不幸になってくる。
挨拶も交わさない、返事も小さい。いつも怯えていて、とても弱い。
弱くて、どんくさくて、その割には男子に媚びるずるがしこい女。
再葉から男を取られた友達も、あたしは知っているの」
「なんだよ、それ!」
響の言葉に、少し気になる点があった。
再葉は付き合ったことがないと言っていた。
男子との付き合いがなさそうな、初心なところも俺はすぐに分かった。
確かにたどたどしく、声が小さく、少しどんくさいところはあるかもしれない。
「それは違う」
「いいえ、なにも違わないわ。
ケン、あなたも心当たりがあるんでしょ。
昨日だって、ケンが湖に落ちたって聞いたわ」
「それは……確かに」
思い当たる点は、なくはない。
俺は再葉とのデートで、湖に落ちていた。
今日だって恵理那に対して、再葉が強く言い合っていた。
「まあ、それでも俺は……」
「あなたのためを思っているの、悪いことは言わない。
絶対に再葉はやめた方がいい。ケンが不幸になるから」
響は、俺の右手をつかんできた。
ハンバーガーを持つ右手をつかんで、俺をしっかりと見ていた。
響の目は、長い付き合いで分かっていた。
響はマジで、俺に言っていることが。
「今すぐ再葉と別れて、健斗!」
響がダメを押すように、俺にそう言い切っていた。




