018
今、俺の机には再葉しかいない。
最近は、休み時間に再葉と話すことが増えた。
それにしても、恵理那に対して堂々と再葉が妬いているのだろうか。
「本郷君、私……」
「どうした?急に俺の席に来て」
「私は梶原さんに、なんかひどいことを言っていて……」
「再葉がやきもち焼いたんだろ」
「私が?」再葉は、困惑した顔を見せた。
先ほどまで恵理那に対して、強く言い返す再葉の表情ではもうない。
今にも泣きだしそうで、不安そうな再葉の顔を見せていた。
「まあ、あれは少しやりすぎだと思う。恵理那も困っていたし」
「でも、本郷君の周りには女子ばかりで、通学していて」
「ああ、そうだな。それは体育祭の実行委員だからな、俺。
昨日は、実行委員の会議があって俺の代わりに恵理那が参加したんだ。
その話をしに、わざわざ俺の家に来たんだよ」
「そうだったんですか?ごめんなさい」
素直に、再葉が謝っていた。
「まあ、俺は確かに女子とも話すことが多いけど、彼女は再葉だけだ。
それに関しては間違えないから、大丈夫だよ」
「そう、ありがとう、本郷君」
「再葉、それより昨日はごめんな」
「本郷君?」
「あんなに嫌がっているのに、俺はメモを取ろうとしたことだ。
おまけに、俺が湖に飛び込んでデートも台無しにしてしまったし」
俺は、再葉の前で頭を下げていた。
それは昨日ちゃんと謝れなかった、再葉への謝罪。
俺が頭を下げる前には、再葉が見ていた。
「なんで、本郷君が謝るの?」
「いや、当然だろ。あんなこともしたし、デートも中途半端になったからな。
これでも俺はかなり責任を、感じているんだ」
「ズルいよ、本郷君」
再葉は、俺の前で泣いていた。目にあふれる涙を、何度もぬぐっていた。
「再葉?」
「私、健斗のここが好き。優しくて……暖かい。
私にないものを、健斗は持っている」
「泣くなよ、そんな大したことじゃ……」
「ううん、私には大したことだよ」
涙声で、再葉が俺に言っていた。
なんだろうか、いきなり女子を泣かせたのか周りからヒソヒソと声が聞こえてくる。
(何か誤解されているのか、これは)
そう思った俺は、再葉に手を差し出した。
「ちょっと外に出よう」
俺は再葉を連れ出して、教室を出て行った。
教室内の周りの生徒の冷たい視線が、俺に向けられる。
俺たちをずっと見ている一人の女が廊下から見ているのを、その時の俺はまだ知らなかった。




