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(KENTO’S EYES)
俺は新幹線に乗り込んだときは、東京を夜九時に出ていた。
こりゃあ、夜十一時。完全に親に怒られるな。
新幹線の中は、静かでクーラーが寒いくらいに効いていた。
新幹線内の客は、一様に疲れている人が多い。
会社員や、大人が大多数だ。車内にいる未成年は、俺ぐらいか。
タワーで、再葉が泣いた。
そして、唇をかわした。
あのキスは今でも、俺の感覚として残っている。
(俺は選んだんだ)
それは、運命という時間に究極のデート。
時間を自在に操り、未来を見たチュパカブラの運命を知っている。
この日に再葉が死ぬという、悲劇の運命。
それを救うために、俺はデートをした。
再葉を救うことが、俺の行動理念だ。
それ以外を考えずに、ただ前だけを向いてきた。
タワーで意識を失った再葉、彼女の体が俺の隣の座席にある。
目をつぶっていて、動かない。
(俺は、間違ってはいない)
そこに俺は、感じていた。
帰路を急ぐ新幹線は、確実に俺たちの家に向かう。
それは後悔かもしれない。
これからの世界は、絶望かもしれない。
だけど、俺は前を向いて進むんだ。コイツと。
俺が振り返った再葉は、ゆっくり目をこすっていた。
「あ、健斗……ついたの?」
「ああ、もうすぐだ」
ちょうどタイミングよく、新幹線の車内アナウンスが鳴っていた。
「次は、掛川」というアナウンスを流しながら。




