016
いつも通り、俺は学校に来ていた。
もちろん、学校にやってきた俺は生活指導と担任からこっぴどく怒られた。
浜名湖の事件は、小さなニュースになっていた。
怒られた俺は、教室に戻って授業に参加する。
ただ生活指導に怒られたのは俺だけで、なぜか再葉の姿はなかった。
そして、休み時間になった。
俺はそのまま、再葉のところに行こうと立ち上がったらその前に一人の女が立っていた。
長い髪に、眼鏡をかけた女子。
ブレザー姿で、行儀よく立っている。
朝、玄関前にいたその女子は、俺の方をじっと見ていた。
「なんだ、えりちょーか」
「あら、本郷君。休んで浜名湖に行っていたのね」
それは、クラス委員長の『梶原 恵理那』だ。
『えりちょー』と言われていて、絵にかいたような成績優秀女子だ。
「もう、その噂は伝わっているのかよ」
「浜松湖でしょ、学校生活にも疲れたのかしら?」
「そうじゃなくて……」
「昨日は、体育祭の委員の集会があるのをすっぽかして……」
「あ、そうだった」
俺は、体育祭の委員だったことをすっかり忘れていた。
「あ、そうだった!じゃないわよ。
昨日は、塾だったけど代わりに参加したんだから。
ちゃんと感謝しなさいよね」
「はいはい、どうもありがとう。えりちょー」
「感情が、全然こもっていないいわ」
真顔で、はっきり言ってくる恵理那。
どうやらそのことで怒っていた恵理那が、わざわざ朝早く俺の家を訪ねたのだろうか。
七時前の通学で、恵理那も大変そうだ。
「まあ、そう言うなって!
本当に俺は、えりちょーに感謝しているんだから。
いつも黒子に徹して、頑張っているえりちょーに」
「な、なによそれ!」
わかりやすく、照れている恵理那。
俺が肩に手をのせると、すっかり恵理那があたふたした顔を見せていた。
「それは、あたしは……クラス委員として当然だし」
「そんな当然のことも、ちゃんとこなせるえりちょーが」
「あたしは……その……その」
「梶原さん」
俺が褒め殺しを恵理那にしている最中に、一人の女が近づいているのが気付いた。
それは、長い髪で大きな瞳のあの女だった。




