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(ERINA’S EYES)
私はいつも通り、夜は駅前の塾に通っていた。
受験で、いい学校に行く。それは両親の願いだ。
そのためにも私は、常に努力を惜しまない。
それが正しいと思っていた。そんな価値観を変えたのは、あの人だったけど。
「委員長」
「あれ、飛鳥さん」
そこには少し日に焼けた少女がいた。私と同じクラスの、用宗 飛鳥。
クラス一の運動神経を誇り、静岡市内から通っている。
「今日も勉強なの?」
「ええ、私はいい大学に入りたいから……でもね」
「ん?」
「あなたも部活?」私は、飛鳥に話題をすり替えた。
「そう、部活。体を動かすのが、好きだから」
「そうね、あなたらしいわね」
「ねえ、最近恋している?」
「え?」唐突に、飛鳥が私に聞いてきた。
たまに、驚かされることを飛鳥は言ってくる。
「私は……もう恋はしない。今は勉強にいそしむのよ」
「それって退屈じゃない?」
「まあ、いい大学に……」
「もっと楽しくやろうよ、ね」
「えっ、ちょっと」
そんな私に飛鳥が、強引に手を引っ張ってきた。
「ちょっと遊ぼうよ」
「遊ぼって、あんたは電車の時間が」
「そしたら、折角だし恵理那の家に泊まる」
「ええっ!」
私はさらに脅かされた。
でも、彼女なりの気遣いなのかもしれない。
一年前の修学旅行で、私は彼にフラれた。私をふった彼には彼女がいた。
だけどその彼女がいなくなって、私はチャンスだと罪悪感ながらに思ってしまった。
だけど、そんな彼は私に振り向きもしない。
「行こっ!」
最後まで無邪気な笑顔を見せて、私は飛鳥に連れていかれた。
それは夜の街へ。




