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一年彼女  作者: 葉月 優奈
『一年彼女』投稿23
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中本は、雲吞で育ってきていた。

それは再葉と違う人生を、送ってきた。

雲吞で育った、劣等生の不死者の中本は再葉がうらやましいのだ。


「再葉は、うらやましいの。

私には、何もあなたにかなわなかったから」

「不死者のデータだろ」

俺は知っていた。

中本が持ってきたそのデータは、不死者のもの。

数値の意味はわからないが、再葉だけ飛びぬけて優秀なのが分かった。


「それが、雲吞の中での序列だから」

「そんなもの、雲吞の中であって中本は……」

「私にはそれが全てよ。

でも、再葉はそれをも捨てて私の前から消えていった。

それが、私には許せないの」

しゃべりながらも、中本は感情的になっているようだ。


「中本、落ち着け!」

「いいえ、それはできない」

「芙蓉、ごめんなさい」

そんな中本を、抱きしめたのは再葉だ。

泣いている再葉に、中本が驚いた顔を見せた。


「そんな顔したって……」

「ごめんね、でも私はここにいたい。健斗と一緒にいたいの」

「再葉……あんた」

中本は、再葉の涙には弱い。

それだけ再葉は、誠意を見せていた。

そんな再葉の顔を、中本がじっと見ていた。


「私はあなたに、すごく妬いていたのよ。

あなたは全部持っていて、私は何もない」

「そんなことないわ、芙蓉。

あなただって、いいところはたくさんある」

「再葉……」

二人は、俺の知らない世界で結ばれた戦友だ。

再葉は、中本の頭を優しくなでていた。


「再葉……ありがとう」

「ええ、芙蓉」

再葉と中本には、いつの間にか涙がなかった。

二人とも傷を慰めあって、どこか穏やかな顔に変わっていた。

そんな二人を、俺は少し遠くで見ていた。


「健斗、ありがとね」再葉のそばにいる中本が、俺に突然声をかけた。

「ああ……」

「後はあなたの番よ」

最後に中本が、一言いい残して再葉から離れていった。

何かを、俺に託すかのように背を向けて姿を消していった。



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