015
俺の家は普通の家庭だ。
マンションの三階にある3LDKの家。
そして、俺には三人の姉がいる。いずれも年上で、二人はすでに結婚をして家を出ていた。
だが、一番上の姉はこの家にいる。
「なんだ、雪乃姉か」
「まあね、健斗は長男坊だし。あたしは、最近出会いもないし」
「で、実家に戻ってきたわけか?」
「まあね」とはにかみ笑顔を見せているのが、一番上の長女『本郷 雪乃』だ。
そろそろ三十路が近づく姉は、髪はボサボサだし酒臭い。
「昨日の合コン、行ったんじゃないのか?」
「いったわよ。だけどダメね、やっぱり東京の方に行かないと無理ね」
雪乃姉は、顔を赤くして俺に近づく。
口臭がまだ酒臭い。とにかく臭くてかなわない。
「でも、健斗も学校をズル休みしたんでしょ」
「ま、まあ……」
俺はバツの悪い顔を見せた。
そんな雪乃姉は、俺の弱気な顔に付け入ってくる。
「なんで休んだの?あまり学校、休まないじゃない」
「たまには休みたいこともある」
「制服で、浜名湖に?」
「いいだろ」
「へぇ、女の子と一緒だったって」
その言葉を聞いた瞬間、俺は顔を赤くした。
「いいじゃないか。俺が制服着て、誰といようが!
雪乃姉には、なにも関係ないだろ!」
「関係あるわよ、あたしの弟だし」
そういいながら、雪乃姉は俺を抱きしめた。
雪乃姉も、腕力があって俺の頭を強引に胸につけてきた。
雪乃姉の胸は、とても大きい。これが大人の胸なのだろうか。
「く、苦しいって」
「ウチにいる、唯一のかわいい弟だから。
学校休んで、女の子と浜名湖デートなんてやるわね」
「そうじゃないって言っているだろ」
「でも、ダメよ。簡単に見つかるようなことをしちゃ。
湖に飛び込んで愛をアピールしようとしたんでしょ。
わかった、だから制服がビショビショだったのね」
雪乃の推理は、遠からず当たっているから困りモノだ。
それに、雪乃姉は昨日の合コンの失敗でかなりしつこくなっている。
この酒臭さは、ヤケ酒のものか。
「わかった、わかったからって。そういえば母さんは?」
「いないわよ、朝から出かけている」
「うわっ、どおりで」
雪乃姉を抑える存在は、母親しかいない。
だけど母親が出かけている以上、この家の天下は雪乃姉のものだ。
「ねえ、今日も学校さぼっちゃいなよ」
「そういうわけには……あっ!」
そんな折、突然チャイムが鳴った。
俺は助かったと思い、そのチャイムの音に反応してベッドの上から出て行った。
雪乃姉の支配から抜け出した俺は、そのまま家の玄関を目指していた。
その玄関前には、一人の女が待っていた。




