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静かな公園、平日の朝は曇っていた。
今にも雨が降り出しそうな天気は、これからのことを予見していた。
倉庫での戦い以来、二人は顔を会わせていた。
「彼女は、健斗に危害を加える」
すぐに再葉は、警戒して身構えた。
だけど俺は、そんな再葉をなだめる。
「中本を呼んだのは、俺だ」
「そう、御呼ばれしたのよ」
目を細めて、怪しげな笑みを浮かべる中本。
「どういう意味?」
「あなたの記録は、私も持っているからよ。
雲吞所属である四十万 再葉」
「私は違う、ユズリハ。若葉の……」
「その若葉も、雲吞にいたのよ。あなたが嫌う雲吞に」
中本は、いつも通りの強気な顔だ。
美人の顔立ちは凛としていて、勝気な性格。
それでいて、再葉の前で腕を組んでいた。
「あなたの父は丁であることは変わらないから」
「それは違う」
「違わない。一度表の世界で死んだ私たちは、丁によって生き返った。
それは変わらない事実。そうでなければ、あなたはとっくに死んでいるもの」
「嘘よ!」
「記憶はなくても、事実は曲がらない。
あなたは不死の実験を行われなければ、ここに存在しない。
存在することができない、どこにも居場所がない」
「だから、俺が呼んだ」
そこに俺が入ってくるが、俺はわからなかった。
中本に、雲吞時代の書類をもらった。
再葉は雲吞に属しているが、データしか残っていない。
雲吞も、結局は再葉に不死者としての価値しか見いだせていない。
だけど、再葉はそこで生きてきた人間だ。
デートをする前に、俺はここではっきりさせたかった。
「健斗……」
「今から聞くことは、つらいことかもしれない。
忘れようとした、苦しい過去かもしれない。
だけど、これからデートをするにあたって君には必要なんだ。
絶対に忘れてはいけない、再葉の過去を。その記憶に焼き付けてほしい」
それは俺のまっすぐな感情。
普通の家庭に生まれた俺と、あまりにも違う人生を過ごしてきた再葉。
「そうね、健斗に言われたら頼みに答えないといけないじゃない」
満足そうな笑みを浮かべ、どこか優越感に浸った中本は再葉の前で手を広げた。
「じゃあ、話すわよ。
あなたの過去を、私の視点で」中本はそういいながら、話を始めていた。




