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それから二時間後、俺は病院に来ていた。
香音と一緒に、病院の中に入る。
そのまま、通されたのは重病用の病室だ。
俺は香音と一緒に通された、その病室に美来がいた。
「美来……」
「美来様、ご無事ですか?」
俺と香音は、同じように声をかけた。
だけど、いつも元気で小生意気な美来はおとなしい。
「うん」返事もそっけない。
「しおらしいな、美来。らしくないぞ」
「いいでしょ」
「助けてくれて、ありがとな。
俺のせいで、こんな目になってしまって」
「いいの、美来はそれが仕事だから」
「なんで割り切れるんだよ!」
病人の美来のそばで、俺は思わず憤った。
香音もそうだ、美来もそうだ。
俺は確かに弱いかもしれない、普通の人間だ。
だけど、何でも仕事という言葉で片付けていいわけがない。
「ごめん、悪かった」
「面白い価値観ね、健斗は。
ううん、自由ってそういうことなのかもしれない」
「俺は世界がどうとか、何も知らない。
未来や香音よりも、ずっと甘えた場所で暮らしてきた。
でも、そんな二人が素直に俺はかわいそうだと思う」
「そっか、そうなのね」
心なしか、美来の顔が明るくなったような気がした。
それを見て、俺もほっとした顔を見せた。
「だから、再葉が好きになったのね。理解した」
「ああ、そうだぞ。俺は……」
「再葉の彼氏だからな」
俺の決めセリフを、横取りしてきた香音。
その香音の表情も、少し和らいでいるようにも見えた。
「こら、香音!」
「こうして言っていると、ダサいセリフね」
「お前が言うな!」
俺は香音を、突っ込んでいた。
意外と香音は、普通に笑えるじゃないか。
不愛想な香音が見せる笑顔は、普通の女子高生にしか見えなかった。
「ありがと、だいぶ明るくなれたわ。
それじゃあ、本題に入るんでしょ。健斗」
それは未来が、俺に問いただすことだった。
俺は迷うことなく、美来にある質問をしていた。




