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再葉は突然、静かに苦しみだした。
それは、再葉の体が弱っていることを意味していた。
今まで、再葉にそんな異変が出てこないことがおかしかった。
呼吸を乱した再葉を寝かせて、若葉が再葉の部屋に来ていた。
「再葉は、大丈夫なのか?」
「ええ、だけど彼女の体は悲鳴を上げているわ」
「そうか」俺は首を横に振っていた。
俺は険しそうな顔の若葉を、じっと見ていた。
静かに眠る再葉は、目を覚まさない。
「体の悲鳴か」
「再葉は、不死者になるために多くのことを犠牲にしているわ」
「中本の資料を見た、雲吞の時の再葉は……優秀だったんだな」
「そこまで調べているのね」
若葉は、残念そうな顔を見せた。
彼女にとっては、中本と手を組んでいるのが面白くないのだろう。
「中本は、俺のクラスメイトだ」
「そうだったわね、それで何かわかったの?」
「再葉は、とても優秀な不死者であることがわかっている。
それゆえに、体の負担が多かった。
実験もほかの二人より、多く繰り返されてきた」
「まあ、雲吞も金のために彼女たちを育てていたから。
私もいけないのだけど」
若葉はもともと雲吞の人間だ。
だから、そこに対しては罪を感じているのだろうか。
「若葉さんは、なぜ雲吞に?」
「私は家に居場所がなかったから」
「居場所か……不死者を殺す一族だった……」
「ええ、私は優秀だったの。
家の中では、高い地位にいた。
そんな中で、雲吞が実験していた人工不死者の討伐をしたのだけど……小さな女の子だった」
若葉が辛そうな顔で、話を始めた。
「あ、しんみりした話だから」
「いや、その女の子を殺せなかったんじゃないですか?若葉さんは」
「そうね、そのとおりよ」
若葉は眠っている再葉を見ていた。
「怯える年端もいかない小さな女の子。
それは、美来の姉なのよ」
「美来の姉、彼女はどうしたんですか?」
「殺されたわ。美来を守って」
「そうなのか、ごめん」
俺は、落ち込んだ若葉の意図をようやく理解した。
だけど、若葉は眠る再葉を見ていた。
「それでも、私は再葉を失わせたくない。
彼女たちは、人間として生きる権利があるのだから」
それは、若葉の心の叫びのようにも聞こえた。




