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モールから戻った俺は、そのまま再葉のアパートに向っていた。
再葉の家に着くと、俺はすぐさま風呂に入れさせられた。
学校指定のジャージを持って出てきた俺は、それに着替えていた。
今、俺は再葉の部屋だ。
引っ越しをしたばかりなのか、物はあまりない。
家具も組み立て式のベッドとタンスぐらい。机もテーブルもない。
カーペットが敷かれた部屋で、再葉はちょこんとクッションの上に腰かけていた。
「だいぶ、臭くなくなった」
「そんなに俺は、匂っていたのか」
「うん」再葉は、真顔で言う。
「やっぱり消臭スプレー、持ってくればよかったな」
「健斗のにおいじゃないから」
「わかるのか?」
「健斗はわかる」
「犬みたいだな」
「そう?」再葉は、意に返さないようだ。
この部屋には俺と再葉しかいない。
夜八時に眠る未来は、まさに子供だ。美来には時間逆流が起こらない。
「今日は、泊まっていくの?」
「再葉の記憶が戻るまで、俺は泊まる。その決意はしてきた」
「言ってしまえば、ズル休みですね」
「お前が言うなよ」
「そう、ですか?」首をかしげる再葉。
思えば、再葉との初デートは学校のズル休みで浜名湖に行ったことが始まりだ。
それを求めたのは再葉……ではなく運命だけど。
「それでも、俺は再葉に戻ってきてほしい」
「ありがと」
「感謝するのは、俺の方だ。
俺を、いつもと違う日常に導いてくれて」
俺の感謝の言葉に、再葉はじっと見ていた。
「再葉の彼氏になってから、俺は日常が楽しくなった。
いつも何気なく流れる時間が、楽しかった。
その中で、再葉に対する感情がより強くなった。
こいつを、守ってやらないとな。だから……」そんな再葉に対して、俺は迫る。
ぼんやりしていた再葉は、不意を突かれて後ろにのけぞる。
その再葉の両肩に手をついて、俺は再葉の上にいた。
「再葉、俺を見てほしい」
四つん這いになった俺は、初めて再葉を見ていた。
それを見て、再葉の顔が少し赤くなっていた。




