013
湖の中はとにかく冷たい。
学生服で、湖に飛び降りたのは俺が初めてかもしれない。
湖の中では、当然呼吸が苦しい。
(なんでこうなった)
俺は湖の中を、泳ごうと必死に手足を伸ばす。
だけどブレザーでは、満足に泳ぐことはできない。
俺自身も水泳が、得意ではない。服が邪魔して体の動きを鈍くした。
(俺は終わるのか……)俺の体が徐々に沈んでいく。
湖の中に、俺の体がどんどん引っ張られていく。
かなり深いところに落ちたらしく、俺はおぼれていた。
(これが運命なのか?)
俺は、再葉が頑なに信じるこの言葉を思い出した。
その運命は、俺を終わらせようとしているのか。
(ああ、そうか……俺は再葉のメモに触れようとしたからなのか?)
俺はどうして再葉がここまで、拒むのかわからない。
だけど、一つ分かったことがある。
(俺は最低だ)
再葉が嫌がることを、続けていたからだ。
それは俺の好奇心であっても、やってはいけない。
俺がやっていたことは最低なことだ。
(ごめん、再葉……)
俺は頭の中で謝っていた。
からかい半分とはいえ、メモを手に入れようとした。
嫌がる女に、あれだけやったら引かれるよな。
俺の頭の中には、悲しそうな再葉の顔。
(再葉、ごめん…ごめんなさい)
何度も謝罪をするが、彼女に届くことはない。
このまま湖の下に沈んで、俺は終わってしまう。
俺は謝りたかった、だけどそれがかなわない。
(再葉……マジでごめん)
俺は声にならない言葉をつぶやきながら、闇の中に引っ張られた。
だけど、水面の方から何かが近づいてくるのが見えた。
それは黒い闇の中から、上の方に見えたかすかな光。
その光は、徐々に大きくなっていく。
光の中から、出てきたのは一人の女。
ブレザーを着ていたその女は、猛スピードで近づいてきた。
(あれは……)
だけどその女の顔を見ることなく、俺は完全に意識を失っていた。
それでも、俺はわかった。俺を助けに来たのは、あの女だということを。




