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翌朝、俺は家に戻っていた。
再葉に残された時間は、とにかく短い。
再葉が二度目の死をする時間まで、あと六十時間というところだろうか。
それまでに、再葉の記憶を取り戻す必要がある。
家に戻って、俺は夜中パソコンで調べていた。
なんでもいい、再葉の記憶を短時間で戻さないといけない。
(再葉との記憶を、もっと残しておくべきだった)
あまり写真が好きではない俺は、再葉との写真が少ない。
残っている写真といえば、ゲーセンで撮ったプリクラ程度だろうか。
(記憶を呼び戻すには、より多くの衝撃や思い出が必要だ)
だけど、時間はない。そんな俺は机に伏せたまま眠っていた。
眠っていたが、俺は目を覚ます。
眠い目をこすりながら目を開けると、俺の背中が何か当たっていた。
「なんだ……」
「なんでしょう?」女の声が聞こえる。
「よく……わからない」眠い顔で、顔を上げるとそこには雪乃姉の顔が見えた。
なぜか、怪しく微笑んでいる雪乃姉。
「雪乃姉……」
「おはよう」
「なんか、背中……ってその恰好っ!」
それは俺の背中に、雪乃姉の胸が当たっていた。
しかも薄手のキャミソールを着ていて、肌がかなり露出していた。
俺はそれを見て、すぐに雪乃姉から離れた。
雪乃姉の腕力よりも、俺の体を動かす力が勝って俺は離れることができた。
「夏だしね、暑いから」
「弟相手に、何誘惑しているんだよ!」
「面白いから、からかっていた」
「からかうな!」
「今日は学校、休みなの」
「あっ、そうだ」今日はまだ平日だ。
そろそろ夏休みだけど、一応平日だった。
だけど、パソコン画面を見て、俺は姉貴に言う。
「俺は休む」
「どうして?」
「休むって言ったら、休むの?」
「どこかデートに行くの?」
パソコン画面を見ている雪乃姉は、不敵な笑みを浮かべていた。
画面には、『ロマンチックな場所』と書かれた検索エンジンのページが表示されていた。
「あ……」
「デートのために学校休むなんて、お姉ちゃん看過できないわね」
「それはその……」だけど、そんな俺の家に突然インターホンが鳴った。
「インターホン……誰だろ」
「あの子じゃない、一週間前に来ていた」
そんな音を頼りに、俺は玄関に出ていった。
雪乃姉から逃げるように、俺はこの部屋を出ていった。




