122
いきなり土下座をした若葉。
その顔は、彼女の誠意が伝わってきた。
ソファーに座っている俺は、困った顔を見せた。
「若葉さん、やめてくださいよ」
「いえ、あなたに謝らないといけない。
私たちの世界で、私たちが救わないといけないのに……」
上げた顔の目に、涙がはっきりと見えた。声も涙声だ。
「若葉さん」
「私は、再葉を救うために雲吞を抜けた。
それは、間違っていないと思った。
だけど、再葉の運命を死へと追いやっていたのね。
私がやっていたことは、再葉を殺そうとしていただけだから」
「それは違いますよ」俺はきっぱりと否定した。
「え?」
「再葉は、少なくとも幸せだった。
俺と一緒にいたときも、俺は幸せだった。
雲吞にいた再葉のことは、俺は知らないけれど。
だけど、俺との一年彼女は少なくとも幸せだったと俺は思う。
俺は再葉を、再び幸せにしたいんだ。いや、幸せになるべきだ」
「本郷君……」若葉は、俺を羨望のまなざしで見ていた。
「ありがとう、再葉の彼氏になってくれて」
「だから今は、メモ帳と向き合うべきだわ。
再葉を救うヒントが、ここに書かれているのだから」
「ええ、これはあなたに渡すわ」
若葉は、俺にメモ帳を託した。
俺は若葉から、メモ帳を大事に受け取った。
俺は真剣な顔で、メモ帳をパラパラとめくってみる。
そこには、俺と一緒に行ったデートの場所が書かれていた。
懐かしくもあり、デートの詳細も事細かに書かれていた。
そのうえで、デートの台本のようでもある。
これが運命で、チュパカブラが書いたことなのだろうか。
(なるほどな……ん)
だけど、俺はある一文を見ていた。
それは再葉が書いたものだろうか、殴り書きで書かれた一文に目を奪わせた。
(そうか、そうだったんだ)
それは再葉の秘めた思いが、込められた言葉だった。




