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若葉に言われた時から、俺は迷っていた。
何度もしつこく聞いてくる若葉は、真実を知りたがっていた。
だけど、この真実は残酷な結果だろう。
それでも俺の言葉を待つ若葉に、言わないわけにはいかなかった。
「再葉はもうすぐ死ぬ」
「え?」
「再葉の記憶が戻らなければ、あと二日ほどで死ぬ」
俺の言葉に、若葉は困った顔を見せた。
その死亡宣告は、若葉も真剣に聞いていた。
「そんなに早いの?」
「ああ、俺が覇王弓で短くなった寿命よりはるかに短い」
「そうなのね」
うなだれるように、若葉ががっくりとした顔を見せた。
俺が思う以上に、若葉はショックがあったようだ。
そんな若葉は、メモ帳をパラパラと見ていた。
「チュパカブラのような不死者は、時間の流れが違うの。
全ての人間……いや地球上の全生物よりも時間の流れが違う。
だから彼の見たその運命は、運命ではない。現実に起こる未来の事象なの」
「時間を操れるってことか?」
「彼の体自体が、タイムマシンみたいなものね。
彼はおそらく、見ていると思う」
「じゃあ、救えないのかよ」
「運命は分岐する。再葉を救うには、記憶の補完だけよ。
チュパカブラは、運命を変える唯一の方法を言っているわ」
「そうなのか」
それほどまでに、チュパカブラはすごいのか。
ここまで人外だと、何が本当かわからなくなる。
だけど、若葉は完全に信じているようだ。
「メモ帳にも書いてある、二千二十一年、七月十六日、再葉は再び死ぬ。
それは永遠の別れである……と」
「まさか……」メモを見せてきた若葉。
タワーで言っていた再葉の言葉を思い出す。
再葉は、飛び降りる前にはっきりとそう言っていた。
「ごめんなさいね、あなたを巻き込んでしまって」
そして、若葉はリビングのソファーから降りていた。




